■
さて本日は、「暇潰し編における梨花の予言について」考えてみたいと思います。
その予言の内容は、54年〜58年の今後5年にかけて発生するという殺人について。
54年、ダム工事現場監督が惨たらしい殺され方をして遺体をバラバラにされ捨てられるということ。
55年、沙都子の両親が突き落とされて死ぬこと(あるいは不幸な事故)。
56年、自分の両親が殺されること。
57年、沙都子の意地悪叔母が頭を割られて死ぬこと。
58年、自分が殺されること。
年毎に、この通りに述べています。
まずこの表現の中で引っかかるのが、“沙都子絡みの死に関しては殺されるという表現が避けられている”という事です。
あまつさえ、55年の沙都子の両親の死に関しては不幸な事故という同情的な表現さえ用いられています。
ここで他の年度の事件を検証してみると、54年の事件は表向き「酒盛りを咎められての犯行」となっており、もしこの事件の実態が額面通りであるならば、これも不幸な事故と表現することも可能なわけです。同じように同情の余地はあるはずです。
57年、麻薬中毒者に夜道で頭を叩き割られたとされる北条玉枝についても同様です。
しかしこれらの事件に関しては単純に「殺される」という表現のみが用いられています。
…これは、梨花が沙都子を庇う口を利いているとしか思えないのですが…。
少なくとも梨花は、55年の事件に関しては「誰かが沙都子の両親を突き落とした結果二人は死に至った、そしてその経緯は不幸な事故とも呼べるものだった」と考えていると推測されます。
梨花がそう考える根拠と北条家の家庭環境と周辺の事情を考えてゆくと、やはり「梨花が考えている55年の事件の犯人」というのは、沙都子しか考えられないのですが…。
(継父と折り合いの良い兄を敢えて除き、虐待騒ぎを起こして折り合いの悪い自分一人が同行させられた両親との旅行先で、崖下に濁流の見える手すりの傍らに立ち尽くす両親に手招きされた沙都子は、突き落とされる、殺されると疑心暗鬼を起こし二人を逆に突き落としてしまった、とか)
さて続きです。
梨花は自らが殺されるということを赤坂に告げた後、それを「とても不愉快なことだけど、多分決まっていること」とし、そして…こう続けています。
「最後の死はハンカチか何かで口をふさがれ意識が遠くなって二度と目覚めないような慈悲深い形で行われる。
この村は人の命を何とも思わない連中でいっぱいだ。
昭和57年までの事件は村の連中の意向によるもの。
だけど、最後の自らの死だけはそいつらの意向ではあり得ない。
昭和57年までの奴らの行動がそれを否定しているのだ。
じゃあ一体、誰の都合なの…?」
…この言葉の直前に、“梨花が自分の死について述べる”という文脈があったため、
私はてっきり、この「最後の死」というのは、「多分眠らされたまま内臓引きずり出された梨花の死」の事を言ってるんだろうなー、と思っていましたが、…違いますね。
これって恐らく、大災害によるガス中毒の死の事を言ってるんですね。
深夜に窒息死。
…考えてみたら、その死に方について、大石も梨花とよく似たような事言ってるようですね。捜査ファイルの中で。(ストンと落ちてそのまま…)
最後の死=梨花の死ではなく、最後の死=大災害と捉えると、この時の梨花の台詞は、
“人の命を何とも思わない奴らばっかりである村の連中は、自分達の都合で昭和54年〜57年の「祟り」を起こすけど、58年に起こる自分の死と、それから大災害を起こして村まるごと滅ぼすような真似に関しては、奴らはしない。し得ない。じゃあこれをやらかすのは誰なんだろう”
という風に解釈できることができます。
58年に発生するというそれらの死に関して、梨花は、自らの死を「殺人」「決まっていること」「わからない誰かの都合」とし、また大災害を「わからない誰かの都合」としています。
少なくとも梨花は、58年の自らの死と大災害とを人災と思っている様子です。
そして「水面に映る死という影を乱す為なら、小石を投じてもみる」と(失礼な)発言をもしている以上、微力と認めながらも赤坂に助けを求めている、というのもまた事実。
梨花は本当に「死にたくない」のでしょう。
まあ、そもそも当初、雛見沢にやってきた赤坂に構ったのはただの「暇潰し」だったのでしょうが…。
それから、「56年、私の両親が殺されます」という部分も妙です。
実際には綿流しの翌日父が病死、母は「オヤシロ様の祟りを鎮める」と書置きを残して失踪、沼を探しても死体は見つからなかった…という経緯のはず。
自然死と失踪で片付く事件のはずなのですが…梨花は「殺されます」と表現しています。
また、この件に関してだけは「殺される」という提示のみであり、より詳細な表現がない、という点についてもちょっと不審を感じます。
仮に梨花の言うように両者が他殺として…そんなことのできる犯人は一体誰なのでしょうか。
梨花は、村内の誰かだと思っているようですが。
また、梨花が北条玉枝が意地悪だと知っているのは、目明し編でも語られていたように、ダム闘争時に兄夫婦のために「多少のとばっちり」を受けたせいで自分達夫婦までも孤立し、そのせいで自分に対し悪意を持っていると思い込んでいる近所に向けて冷たく当たり、結果として自分の考えるような近所関係になっていた、という辺りの事情を承知していればまあ「性格が意地悪」と断ずることもできるかとは思うのですが、なぜその人物が「頭を割られて」死ぬことまで、4年前の53年時に知っているのでしょうか。これも疑問です。
まとめると、
53年時の梨花は、赤坂に向かって「予言」をした梨花は、
・一年後、現場監督がリンチされ殺されることを知っていた。
・二年後、沙都子の両親が「不幸な事故」で突き落とされて死ぬ事を知っていた。
・三年後、自分の両親が殺されることを知っていた。(但し公的には父は病死、母は書置きを残し失踪という決着)
・四年後、沙都子の意地悪叔母が「頭を割られて死ぬ」ことを知っていた。
・五年後、自分が死ぬ事を知っていた。
・同年、大災害で大勢死ぬことも知っていた。
・これらの殆どは村の連中の都合だと思っていた。
・ただ最後二つに関しては、(多分決まっていることだと思いつつも)誰の都合かはわからなかった。
というような認識を持っていたものと思われます。
ですがこれ…この段階でこの認識の既得って、本当に…可能なんでしょうか。
57年までの殺人は、“四年前の段階で計画が組みあがっていた”と見れば…まあ微妙なところもありますが、とりあえずうなずけなくもありません。
しかしそれだと、58年がどうしても説明つかないですね…。
一番厄介なのが、「誰がやるのかわからないけど、自分は殺される」という部分です。
実際梨花は五年後に殺されたりもしているわけで、「そのことを五年前に知っている」というのは、何らかの形で自分を殺す計画や犯人を知っていなければまず不可能です。
また、大災害を察知しているのも謎、といえます。
あーわからん。
嗚呼。何故知りえぬ事まで知っているのだろう。梨花。
それこそ本当に、予知能力でも持っていない限りここまで詳細に未来の事を語れないだろうと思われるのですが…。
わからん。ダメだ。
やはり、この人のこういう怪力乱神な(?)部分については考えない方がいいのかな。
うーん。
一応、立ててみた推理としては……
梨花には実は、一卵性双生児がいて、
そしてそれは、女子連続八代目の第一児は女児でなければならないのに(オヤシロ様の生まれ変わりにならないのに)梨花よりも先に出てきてしまった、双子の「弟」であって、
その弟の存在は産まれた時から厳重に秘匿されつつ、双子を忌み嫌う御三家のしきたりにも従う形で、普段ずっと祭具殿に押し込められている。
…なんて説を、考えてみたのですけどねぇ。
梨花「お父様、祭具殿の中からたまに聞こえてくる音は何なのですか?」
神主「…。あの中には、オヤシロ様がいらっしゃるんだ」
で、学校脱走後の詩音同様に、姿形が似ていることを利用して、時々梨花がそいつと入れ替わって外の世界に出してやっていたんだけど、年月が流れ成長に伴って二人が似通わなくなる時期が近づいてきたせいで、「いずれ祭具殿に押し込められたまま永遠に外に出られなくなる」と焦ったそいつが両親を始末してしまった…とか。
…外に出てる時に人を殺していた、とか。
…自分の存在を知る人物を次々消していってる、とか。
…いずれ村ごと滅ぼす気、とか。
…消えた人々は祭具殿の地下で弟の相手をさせられている、とか。
…梨花はいずれ戸籍さえ持たない弟が表の世界に出てゆくために自分が殺されることを予期している、とか。
…詩音を襲ったのは弟のそいつ、とか。
…退場させてもらうわ、と言って自殺したのはもともと死んでいるような身分だったからで…
あれ?ダメだ。
井戸から引き上げられた遺体が女性ではなく男性とわかってしまう。
うーん。
まだ説明のつかない部分も多いけど、
もう少し、この方向で考えてみてもいいかも知れない。
追記:今ふっと思ったんですが、
祟殺し編の戦勝祝賀会って、「焼肉パーティー」を「古手神社境内」でやっているあたり、明らかに古代の綿流しを意識していますよね。
そんで、
祟殺し編の冒頭らへんの野球対決では沙都子が特大アーチを放ち決勝点を決めますが、あれって「沙都子が金属バットを非常に上手に使えますよ」っていう意味ですよね…きっと…。
ああ。非道いよ原作者様。もう前半の明るく楽しい部活部分まで血の色に染まって見える。