梨花の認識>


 罪滅し編にて自分がループしている事を明らかにする梨花ですが、
 彼女は何も、ループしているからといってすべてを知っているわけではなさそうです。


 そんなわけで、罪滅し編に出てきた梨花の言動から察せられる認識まとめ。


・自分はどうあっても殺される(そしてループする)
・その理由も犯人も不明(自分が殺害される必然性がどこにもないのでわからない、としている)←暇潰し編のモノローグより
・世界に狂いが出るたび修正しようと努力している。(一応)
・入江が死ぬ前に殺されるので、自分の死後入江が割と高確率で死ぬ事を知らない。
・大災害が起きる前に殺されるので、自分の死後大災害が起きてる事を知らない。


 で、ちょっと気になる、謎の注射関連の認識まとめ。


・富竹の死因は「うじ涌き病」を発症する注射のせい。(レナに語った内容から)
・自分がレナに差し出したのはその症状を抑える(あるいは治す)ための注射。(同上)
・綿流し・目明しで詩音に注射しようとしたのも症状を抑えるための注射。(同上)
・注射がうまくいき、相手が「楽になった」という展開もあったらしい。(同上)
・でも逆に自分が注射された場合、はにゅーはにゅーと呻き気持ち悪げになる症状が現れる。
 (あの状況での自殺は梨花の口ぶり通り、薬による強制ではなく自己意思と考える)
・つまり、「うじ涌き病」の実在を梨花は信じている事になる。(レナに語った内容を本心から出た言葉とするなら)
・また梨花は、「うじ涌き病」の特徴的な症状たる喉かきむしりを露呈しなかった詩音にさえ、症状を抑える注射をしようとしている。
・つまり梨花は、「うじ涌き病」あるいはそれに関連する病に、凶暴化・疑心暗鬼・攻撃衝動増加・妄想などの症状が見られる、という認識を持っている事になる。
・ゆえに、梨花はループ上常にどこかから注射器と中身の「症状を抑える薬」らしきものを入手し、誰かが暴走(イコール発症)したのを察知するたびに、世界の狂いを修正する目的で、そいつに注射を試みていることになる。


 で、ちょっと考察してみますと。
 梨花が注射器と妙な薬剤を手に入れているのは、やはり入江診療所を通じてなんでしょうね。
 お年寄りのシンパが多い彼女ならば注射器くらいだったら簡単に入手できるでしょうけど、そういう変な薬剤となると、どっかから掠め取って携帯しておく…なんて簡単なわけにはいきません。
 そもそも「うじ涌き病の発症が注射によって引き起こされ得る」とか、「抑える薬があって、それを注射すれば楽になる」とかいう簡単には信じがたい認識を梨花が持つに至るには、…せめて実際にいろいろ見聞きしたりとかしてないと、とても信じられないのではないでしょうか。
 

 つう訳で少し考えてみたのですが。
 首を掻き毟って死ぬのは富竹ばかりで(まぁレナも掻き毟ってますけど死ぬまでには至らないらしい。立てこもり事件を起こし、警察に無事投降したり、あるいは人質を黒焦げにしたりしている模様)、また、詩音に注射しにきた梨花は誰も伴わずにやって来ていました。
 この辺りから、


・いつかのループで、梨花は死ぬ前の富竹が何かを注射されるのを見てしまった。
・いつかのループで、抑える薬剤とやらの注射に成功した梨花は、対象があっさり無力化するのを見た。あるいは、注射をされた「患者」が「楽になる」場面を目の当たりにした。


 梨花はこういう経験をしてきており、その為にああいう認識を持つに至ったのかな、などと考えます。




 ……まあ、ひとつの可能性として。
 罪滅し編で圭一も語ってるように、妄想に囚われた人の話を否定するのは無意味ゆえに。
 梨花は「うじ涌き病がどうしたこうした」と声高に叫ぶレナに話を合わせてやって、「富竹が変な注射されて死んだ」「私が持ってるのはその症状を抑える薬」って事にしておいた……なんて可能性もあるわけなんですが。
 しかし、この場合だと注射器の中身が問題になってくるわけなんですね。


 梨花がレナに話をあわせたとすると。注射器の中身は「症状を抑える薬」でも何でもないわけです。
 だったら中身は何なのかと考えた場合、梨花の行動目的は「大好きな仲間達と幸せに過ごしたい」とか「世界の狂いを修正する」とかその辺なので、あっさり詩音やレナに毒を盛るとは考えづらいです。
 ゆえに。まあ今後の治療などを考え、行動の自由を奪う程度の薬剤とかその辺りだ…と憶測するのが妥当でしょう。(ろくな凶器も持たず、詩音に奇襲かけて注射しようとするくらいですから…。)
 …しかしながら。
 自称「症状を抑える薬」の注射を詩音に仕掛け、逆に自分が喰らうことになった梨花は、はにゅーはにゅーと呻き気持ち悪そうにしますが、自殺するだけの元気と肉体の自由を残しているんですね。
 また、梨花に相手の行動の自由を奪う意思があったのなら、相手動かなくしてそのまま放置……というわけにはいきません。相手はおかしくなったままなわけですから。
 診療所に無理やり拘置とか、そのまま治療とか、警察に引き渡すとか相応の処置を取らないといけません。悲劇が続いてしまう。
 しかしながら。目明し・罪滅し共に、梨花はバックアップなしの完全な単独行動で注射を試みに来ているわけです。
 この辺がどうしても……矛盾してしまうわけです。




 ゆえに。
 やっぱり梨花は、うじ涌き病と呼称され得る何かの実存・実害をそれなりに信じており、「注射で発症する」「治す薬を注射する事もできる」などという事も信じてて、おかしくなった人を自力で(注射器の中の薬のみで)どうにかしようと行動した結果、詩音を襲撃したりレナに注射器を差し出したりしているんじゃないかな、と私は考えます。


 で、そうなると問題は、一体誰のどの行動が梨花にそういう認識を持たせるに至ったのか、って話なんですが…。


<オリスク関係>


 負け犬さんの新作オリスク「未来へ」。沙都子救出の条件である、
 沙都子の精神防壁突破 → 鉄平排除 の最短手、って感じでいいですねー。
 詰め碁のごとし。この長さできちんと描ききってしまうってのは凄いなぁ。
 あと知恵先生ってメガネかけてないですねそういえば。