6月21日朝〜6月22日の圭一の昏倒地点および、11月28日の日付の取材記録に関する考察



祟殺し編ラストで、圭一は沙都子に吊橋から突き落とされます。
一昼夜気絶し、6月22日朝、覚醒してみればそこは知らない場所。(まあ当然)
適当に歩き回って、ようやく知った道に出て――圭一は異臭と、時期はずれの変色した落ち葉、無数の虫の死骸、そして、ひぐらしの声が聞こえないという事に気づきます。
やがて彼は分校に至り、大災害発生の事実を知るわけなんですが――



 以前の記事で、圭一の気絶していた場所について考察をしまして、その際に「圭一が気絶していた場所は、後に取材を受けた際、記者に指し示してみせた地図上の吊橋とは異なる場所だった」という意見を提示しました。
 これに関する補足(補強)を少し書きます。



 まず、圭一は自衛隊員に日付を確認した際、(たぶん日照などから)自分は殆ど一昼夜気絶していたんだな、と結論づけています。
 というわけで圭一が目覚めたのは22日朝、という事になります。
 雛見沢大災害の発生は22日午前2時〜4時とされています。
 つまり、記者が圭一に語ったようにガス流が圭一の“居た”場所を通過していたのなら、痕跡が残っていなければおかしいはずです。
 この場合の痕跡は、上にも書いたような、異臭、枯葉、虫の死骸…といったところでしょうか。(セミの鳴き声は、沢沿い以外の場所からなら聞こえていてもおかしくはない)
 ガス流は沢沿いに下っていったとシミュレートされたため、本当にガスが通過していったのならば少なくとも沢沿いの木々は葉を落とし、虫の死骸を散らしていてもおかしくはないはずです。
 しかし圭一がそれらを見つけるのは、見知った道に出た後の事になります。


 加えて、圭一は沢において、卵を煮焦がしたような臭いにも気づいたりすることもありませんでした。
 これを、薄い硫化水素の硫黄臭に似た臭気と考えた場合、村を壊滅させるほどの質量のガス流が沢を下ってゆきながら、わずか数時間後にその場所で眼を覚ました圭一がその臭いに気づかない、という事はさすがにありえないでしょう。
 感覚がおかしくなっていたならいざ知らず、見知った道に出たあとで、圭一はその臭いに気づいています。


 これらの点から、

 ・圭一は気絶中どこかに助け出され、ガス流が通過した後、ふたたび沢に戻された。

 この線は消える、と思われます。


*  *  *  *


 で、唯一の生存者とも言える圭一の証言は、この一村壊滅という突発事態(加えて謎が多い)にあたる当局側としても、重要視するかどうかはともかくとしてきちんと検証をするはずだろうと私は思うんですけど、
 圭一がその不審を糾されるのは、実に事件から五ヵ月後。しかも雑誌記者のインタビューにおいてのみ、という事になります。
 そして二日後に容態急変、あっさりと死去。
 これは……ちょっと妙と言わざるを得ないのではないでしょうか。
 


・圭一が「吊橋から落ちてここらへんの河原で気絶していた」と証言する
・災害発生をシュミレートした結果、その河原がガス流の通り道になる
・圭一の証言が崩れる
・唯一の生存者は嘘をついている、という事になるが特に問題にはされない
・後に圭一の証言がおかしい事に気づいた雑誌記者が、取材に訪れる



 とりあえず、こういう流れだったと考えた場合なのですが、
 まあ……災害のシミュレートによって、圭一の証言が「崩された」のに、それでも圭一がその件について何も言われず、何も知らされなかったのは……単にこの災害が純然たる災害とみなされたため――事件性がないと思われたため、だろうと推測されます。
 圭一は嘘をついていませんが、「何らかの理由で嘘をついている」と関係者からは思われていた、ということになるのでしょう。もちろん、災害の根幹に関わる嘘などとは思えないから、特に追及もされず見逃されていたのでしょう。


 現に、テープの内容によれば、取材に訪れた記者は圭一に吊橋の場所を確認させた上で、“その答えをあらかじめ知っていたように”、その不自然な点を糾してみせます。
 記者は、自衛隊やら警察やらとは異なり、“嘘の証言を行った圭一は、村で起きた真実(災害の原因とかはともかく、直前に起きていた連続殺人などの真実)に何らかの形で触れ、隠しているのだ”――という見方をしているのだと思われます。
 そして、二日後にあっけなく圭一は死去。



 誰かが何かを訊ねにきて、数日後圭一死亡。
 …この構図、何かと非常によく似ています。
 綿流し編のラストです。
 目明し編で初めて、大石訪問の数日後、「圭一が死亡していた」という事実が明かされれるのですが…。


 ………ここでちょっと話は綿流し編へと飛びます。


 刺された圭一を見舞った際、大石が投げかけた質問は、「魅音の死体が井戸から揚がったのに、どうして圭一は魅音に刺されたのか? 圭一が会っていたのは誰か?」というものでした。
 しかし、大石はこのとき既に、詩音と魅音の入れ替わり――圭一を刺したのが自殺直前の詩音であったことを看破しています。
 まあ、連続殺人の実行犯の「入れ替わり」――詩音と魅音の入れ替わりそれ自体は既に指紋から割れていたらしいので、この時点で大石が看破していてもおかしくはないのですが。


 だったらなぜ、大石は圭一に既に解答を知っている謎の答えを求めたのでしょうか。
 …あのお見舞いの時点で、大石は以下のように考えていたのではないでしょうか。


 祭具殿侵入の共犯であり、また毎晩電話連絡を取り合っていたという事実からも、
 圭一は詩音の凶行の共犯者だった。
 そして、詩音は逃げ切れなくなったため、協力者の圭一を刺しに行き、自殺。


 そして、生き残った「共犯者」かもしれない圭一に揺さぶりをかけるため、ああいう質問をして反応を見たのではないでしょうか。
 何しろ、刺された晩、「魅音に会った」と語っているのは圭一一人なわけですし。
 そして魅音は逃亡中という扱いになっており、実は死んでいた魅音の死体が井戸の底から引き上げられた事も、圭一は知りません。
 …大石からしてみれば、「魅音に会った」などと語る圭一はとてつもなく怪しいわけです。
 まあ、詩音の転落死体は、魅音の髪型で魅音の衣服を身に着けていたわけですから、大石も圭一が嘘をついているとは思わないでしょうが、しかし。
 詩音が既に精神に異常をきたしていたとしてもです。
 …逃亡中、自殺前に、詩音がわざわざ魅音の格好をして殺しに行かなければならない「前原圭一」は、警察としちゃどうしても疑いを向けざるを得ない人物なわけです。
 たとえば、“魅音と圭一は何らかの秘密を共有しており、それを喋らせてから殺すため、詩音は魅音の扮装をし圭一に会いに行った”等と大石が考えても、おかしくはありません。


 ………で、話を元に戻します。


 記者の取材なんですが、これって――「必要がないから特に誰も訊ねはしなかったけれど、敢えて訊ねたりしてはいけない質問」だったのではないでしょうか。


 何が言いたいのかというと、つまり圭一が本当に昏倒していた場所を検証されてしまうのは、誰かにとって非常にまずかったのではないのか、と思われます。
 仮に例えば、圭一が倒れていたのがシミュレーションによるガス流の直下だった事が証明されてしまった場合、鬼ヶ淵からあふれ出した火山性ガスの直撃、という説自体が崩れる可能性もあります。
 圭一はろくな答えを返さなかったため事なきを得ましたが、再度より込み入った取材を受け、不審点が明るみに出れば、事態はどう転ぶかわかりません。
 その前に、死人に口なしとばかりに圭一を消してしまったのではないでしょうか。



 つまり。
 大災害を何らかの形での人災と考えた場合、
 それを企図した人間は、
 「鬼ヶ淵からガス流が下って雛見沢を直撃した」
 というシナリオになってもらわなければならなかった。
 しかしたまたまその仮想ルート上で一昼夜気絶しているというありえねえ生存者がいやがった為に、そのシナリオが崩れそうになった。
 なので監視していたが、誰も前原圭一にその事を訊ねようとはしない。
 しかし五ヵ月後、数ヶ月前に自殺未遂をやらかし外部との接触を完全に遮断された施設に隔離されたはずの前原圭一は、侵入してきた記者に危うい質問を投げかけられたため、消すことにした。
 綿流し編もまた似たような感じで、大石が余計な疑いを持ち始めたので圭一は口封じされた。


 という事になるんじゃないのだろうか、と考えます。
 しかしそうなると、誰が圭一を殺した/殺させたのかですが…


 園崎父母。沙都子。鉄平。大石。


 生き残ったり行方不明になったりしている主要な人々はこれくらいかと思うのですが……鉄平は多分死んでるしなぁ……。大石も違うだろうし。




ちょっととか言ってこんなに書いてしまった。
ああ…早く原稿終わらして、「沙都子と鉄平共犯説」とか書きてえなあ。



<考察とは関係ないですが>

まだ「書散し編」原稿に手をつけています。


ビクビクしながら原稿用紙換算枚数をカウントしてみたところ…。



200枚。



え゛。



…こいつ…さては常識ってもんを知らねえな…?(←俺)
しかも原稿が未だ未完成。あと50枚弱は書くと思う。
チェックするだけで一体何分かかるのやら…。



作業の進捗状況 本文:あと50枚弱
   スクリプト指示:あと100枚弱



いや…本文の方がもう詰めの段階なんで、作業自体は三日くらいで終わるけれども…
「一体自分は何をしたいんだろう…」と思いつつ作業をしております。
あとこんなクソ長いシナリオを受け付けてくれるのかという懸念も。