<富竹遺体の打撲傷と鷹野の車に積まれた自転車との関連性についての考察>


 …まぁ、さんざん出尽くしてる説だとは思うんですが一応。


 とりあえず、祟殺し編にて圭一が鷹野の自動車に轢かれかけた日=富竹死亡日だったとして、そんで、(圭一に対する彼女の態度の変遷などから見て)鷹野の自動車に積んであったのが、富竹の自転車だったとします。


 で、富竹の死体には四人以上と思われる人間からの殴打の痕跡があったわけです。
 富竹が袋叩きにする理由は皆目見当がつかないし、人を袋叩きにするような存在についても想像がつかないわけですが……しかし鬼隠し編では、いきなり人に襲い掛かって袋叩きにするような人物が出てこないワケでもありません。(注:レナ以外にもね)
 で――そういう人々と2対1で戦りあって絞め落とされた圭一は、家の自室で目覚めた後、訊ねたレナからなぜかその襲撃者の存在を秘され、またレナと魅音との会話から「監督に電話済み」という事実を知らされています。 


 またさらに言えば、富竹は殴られるあるいは死に至る前の時間帯、最後の目撃情報より前の九時前辺りに、村の重大な禁忌とされる“祭具殿への侵入”を果たしているわけです。



 これらの点から。
 圭一を襲ったのがレナや魅音あたりの依頼を受けた、患者収容目的の入江診療所の職員だったと仮定し、「問答無用で襲ってきて自由を奪う、また意識を落としにくる」そして「家に一度帰し友達との別れをさせてやる」という対応を取った…と判断した場合。
 このような診療所側(襲撃者)の対応から、推理を膨らませてゆきますと――




 祭の前の時期。鷹野、入江に「富竹が最近少しおかしい」と相談。
 富竹が保護収容対象である事を訴え、強制収容を要請。自分も協力する、と発言。
 ただし、「せめて祭の夜くらいは一緒に過ごしたい」などと言い、決行を祭の日の夜・祭終了後にしてもらう。
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 鷹野、祭具殿侵入を富竹の助力を得て成し遂げる。
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 祭が終わり、鷹野と富竹が人気のない辺りに二人きりになる。
 鷹野が少し席を外し、その際に富竹の自転車を自分の車に積み込む。(富竹の逃走防止の為の協力行為)
 鷹野を待つ富竹に、四人以上の収容用の人員が迫る。
  ↓
 富竹、得体の知れない男達にいきなり問答無用で襲われる。
 首に鎮静剤を注射される。
 しかし最強に強まった肉体を持つ富竹は無言で襲いかかる職員らの殴打に耐え、なんとか自分の自転車の置き場所まで逃走する。
  ↓
 しかしそこには自転車がないので徒歩で逃走せざるを得ない。
  ↓
 ダッシュで逃げながら富竹は、無言で襲ってきた相手の事を考え、直前にしでかした祭具伝侵入の事を思い起こし、「村の連中の逆鱗に触れてしまったから襲われたのか…。」と判断。
  ↓
 「自転車まで奪っておくとは、用意周到な…!」「くそっ、きっと三四さんも奴らに…!」とか千々に乱れる富竹の思考。
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 収容に失敗し、どうにか収容しようと追ってくる診療所の白ワゴンをやり過ごしつつ、徒歩で村境付近まで辿り着いた富竹。
  ↓
 あともう一息だ、というところでふと思い至る。
 …あ。
 そういえば、自分さっき注射されたっけ。
 でも自分をどうにかしようという村の連中が、わざわざ注射器なんて持って襲ってくる理由がないよな…。
  ↓
 「ま、まさか…」真っ青になる富竹。
 鷹野の話は全部ホラだと思っていた。
 でも、こうして禁忌を犯してみたら、…実際に村人は、多人数で問答無用で襲い掛かってきた。
 なぜそんな事をするのか。なぜ注射器なんて持ってたのか。
 じゃあ…じゃあ、ホラ話としか思わなかったあの話も、ホラ話なんかじゃなくて…。
 寄生虫は確かに実在していて…。
 連年の祭の夜に発生する怪奇事件を引き起こしたように、それは確かに害を為す存在で…。
 そして今日は祭の夜で…。
 自分はさっき得体の知れない男達になんだかよくわからない注射をされた。
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 「う…。」鎮静剤が効いてきて若干意識が混濁する。
 早くも身に現れた寄生虫の効果だと思う富竹。
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 パニックになり角材拾って一人で大暴れ。
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 今日は毎年怪死の発生してる祭の夜、犯した禁忌、得体の知れぬ襲撃者、移動手段を奪われたままでの逃走、正体の知れない注射、寄生虫への恐怖、そしてなぜか重い身体。
 「うじ涌き病」の記事を読んでしまっていたので、焦って混乱してる内に首が痒くなってきてしまう。
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 寄生虫への恐怖からパニックを起こしつつ、首をかきむしりやがて死亡。
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 鷹野、三百メートルほど離れた場所に自転車放置。そのまま失踪。
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 入江、大石に呼ばれ現場へ。
 ただ普通に収容を命じたはずの富竹が、なぜか首を掻き毟って死んでいるのを見て「ありえない…」としか言いようがなくなる。展開的にも死に方的にもありえないから。
 そして、部下が収容しようとした際にボコッたせいで富竹が突発的に心身に異常をきたし自殺、という結論にされてしまうのも避けねばならないので、警察には富竹が異常をきたしてたという鷹野の訴えや収容依頼の事についちゃ何も言わない。
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 ていうか、コレって鷹野さんが吹いてた「うじ涌き病」の症状そのものじゃないか?
 しかも鷹野さんは行方不明な上に翌日焼死体で発見?
 で、二人は祭の夜に祭具殿への侵入を果たしていたのか…?
 これは村の人達の仕業としか思えないけど、中で一体何見てしまったというんだ…。
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 みんなの勘違いエンドレス。




 こうなんじゃないのかなー、と思ったり。
 彼女なら、村内において診療所の果たす一種の自浄作用(…か?)を利用した、こういう二段構えの罠くらい余裕で敷きそうだ。


 ただ、鷹野を犯人にするには動機がまったく不明なんですけどね。
 愉快犯にしては悪質過ぎるし。