墓穴の掘り方

オリスク製作中。


さして関係ない話題を一つ。
物凄くつまらないミステリー。
(いつもの考察記事とかじゃないです)


<ミステリーと墓穴>


 数年前に勤めていた職場で、唐突に机に置いておいたはずの眼鏡がなくなった事があった。


 眼鏡を探していると、一人の社員が敏感にそれを察知して、「どうかしたんですか」と訊ねてきた。
 まあ、もともと物腰の柔らかく親切な人物だったが、いかんせん反応がちょっと早すぎた。
 (まあ、こういう時って一番最初に声掛けてくる奴が怪しいんだよな)とは思ったものの、正直に事情を話した。
 するとその社員はわざわざ皆を呼んで「○○さんの眼鏡がなくなった、見かけませんでしたか」などと親切にも聞いてくれた。
 積極的に状況楽しんでるなコイツ、やっぱコイツかね、とは思ったが私は何も言わなかった。
 皆は見ていないと言った。
 私はあちこち探し回ったが結局見つからず、新しい眼鏡を作ることになった。


 んで、その社員っていうのは40過ぎ、独身、平、仕事ができなくて年下の上司にいつも怒られている、親切で物腰が丁寧なので皆表面上じゃ普通に接するが陰ではひどい言われようをしている、という人物だった。
 ちょっと奇矯な言動を示したりもしていたので、変な奴扱いもされていた。あくまで陰で。
 動機はともかくとして犯人役にはもってこいの人で、加えて私も職場でも浮いていたので彼がそのような行動を取る場合の標的としてはまあ妥当な線とも言えた。
 で、私も不特定対象から向けられるその手の悪意にはもはや慣れっこだったので、以後特に態度を変えたりはしなかった。
 そもそもその人がやったっていう証拠もないし。あとこだわるのさえバカバカしいし。
 こういうの、養鶏場の鶏がストレスから隣同士つつきあってるのと大差ないし。
(↑この辺が悪意を向けられる理由でもあるのだが)


 で、数ヵ月後。
 その社員はすでに仕事上の失態からほとんど失踪するようにして会社を去った後で、ちょっと…数名の年上の社員と雑談をする機会があった。
 で、話の流れで会社を去ったその人の事が話題にのぼった。
 すると、20代後半にさしかかったくらいのある一人の社員の口から、不意にこんな言葉が飛び出した。
「○○さんの眼鏡盗んだのも××さんだったんじゃない?」
 私は眼鏡がなくなった事自体忘れていたし、皆も覚えてないだろうと思っていたのでちょっと驚いた。加えて唐突だったし。
 というか一番驚いたのは、今の台詞から「ああ、目の前のコイツが犯人だったんだ」という答えを得た事だった。


 もちろん証拠とか何もない。
 台詞も、ただ場の流れに同調しただけのものに過ぎないかも知れない。
 ただ、誰も“盗まれた”なんて一言も言わなかったし、私も「別の場所でなくしたかも知れない」とちゃんと言ってあった。
 あと私の眼鏡の紛失なんてどうでもいい事は起きて以後一度も話題にのぼらなかった。
 口が悪いとかそうでないとか抜きにして、本来そこで言わなくてもいい事だった。
 “自分の眼の届かないところでさえ私本人でさえ本当に話題にしていない”事に気付かないのは、最低条件として成果を期待し犯行する存在であるところの犯人くらいだろう、と私は思う。(ややこしい表現だな)
 こういう何の脈絡もないようなところでいきなりボロを出すのは、転嫁したい気持ちがどこかに残ってる犯人だけではないかと私は思う。
 きっと駄目押しの布石を打つつもりでボロを出したんだろうな、と思った。
 あるいは…すべては既に過ぎ去った事、自分は絶対にばれない位置に立っていると確信してちょっと慢心し、言葉でなぶって遊んだつもりだったのかな、とも思った。
 彼は既婚者だったので、奥さん可哀想だな、とちょっと思った。


 で、この真犯人と思われる人に対して…結局私は何もしなかった。
 証拠ないし。こだわるのもバカバカしいし。
 こういうの、養鶏場の鶏がストレスから隣同士つつきあってるのと大差ないし。
(↑お前は結局それか)
 もちろん私の考えすぎ、被害妄想と言う事もできるが…仮に彼を犯人として回想してみたら、納得のいく部分が非常に多かった。その犯人呼ばわりされた社員の人よりも。


 つまり何が言いたいのかというと、疑われるべき人が疑われそうな行動を自発的に取ってくれそうだと判断し得た場合、非常に積極的に利用されるような結果となってもあまりおかしくはねえ、という話。
 あと自分の頭が切れると思ってるタイプのバカ(犯行者)は、単に、頭を使った手の込んだ方法を用いてバカな結果をもたらして帳尻を合わせる、という話。
 …ひぐらしをプレイしていると時々、この手の記憶が頭をよぎる。




 一応の話のオチとしては、これが最近ちょっと話題にのぼった上場企業、ジェイコムに勤めてた時の実話だったりする。
 はぁ…いつも思うが…組織勤めはやっぱり私にゃ向いてねえんだろうなぁ。