<ループじゃねえ>
 本日は、梨花の経験する現象についての考察です。


 …つうかさ。
 ループループ言われてたから時間移動とか時間遡行の類だとばっかり思ってたんだけどさ。
 違うじゃん。
 よく考えたら全然ループじゃないんじゃん。


 ループの定義っつうのは時間の巻き戻しって事でいいと思う。
 でも、梨花の経験する世界ってのは毎回設定が違うわけで。
 “巻き戻し可能な時間”以上の過去が毎回毎回異なっている時点で、…既にこれをループ現象と定義することはできない。


 まあ現象の呼び方はとりあえずどうだっていいのです。
 問題は、“毎回設定が異なっている”って部分です。
 これまではこの生じる差異を、「梨花が巻き戻せない過去の時間に関しては、梨花の経験した過去からランダムで選択してる」て解釈をつけてたけど…たぶん違うなぁこれ。
 梨花は結局、自分の経験する現象を主観でしか見れないから、時間の巻き戻しに見える現象を「ループ」とし、その「ループ」にぶつ切りにされた時間単位を「世界」って定義することによって、自身が世界を並列に把握してるように認識してるだけなんだと思う。
 たぶん厳密には違う。


 …要するに。
 梨花は死を迎える度に、単に『違う世界』の『違う梨花』に放り込まれてるだけなんじゃなかろうか。
 肉体を伴わない平行世界間移動、みたいな感じで、“これまでの世界と歴史や背景がほとんど違わず、設定とか人物配置が多少異なり、そして梨花が存在し、まだ死んでいない世界”へと、死を迎える度ごとに梨花の精神は飛ばされてるだけなんじゃなかろうか。
 いつもいつも高い確率で梨花は死ぬから、必然的に、飛ばされる先の世界の時間ってのは昭和58年の綿流しよりも前になるしかない。
 梨花の主観からしてみりゃ、死とともにいつもいつも時間巻き戻されるわけで、自分はループしてるんだ…みたいに考えても全然不思議じゃないでしょう。
 でもその能力ってのは多分ループ・時間巻き戻しなんかじゃねえ。
 冷静に考えてみても、時間巻き戻して、その巻き戻した時間以上の過去の設定が変わってるなんてのは普通にありえねえ。例えば赤坂は梨花の忠告を受けて東京に帰るが、梨花の忠告は赤坂がやってきた時に(良心から)常に行われるものとしても、その結果が他編と異なっているのはおかしい。
 こいつは二週間の時間巻き戻し程度で説明できる現象じゃなくて、その忠告が行われた過去における平行世界分岐でもなければ説明できないわけだ。


 ゆえに、編ごとの関係ってのはループとか繰り返される時間の順列じゃなくて、『平行世界』ってことでいいと思う。
 で。
 梨花の経験してるのがループじゃなく平行世界間移動だったとすると、何が変わってくるのか?というと。


 “東京”一派が黒幕であり、バイオハザードみたいのを起こして雛見沢を結果的に壊滅させたいんだと考えているとしたら。
 そのあたりが黒幕だってんなら、梨花が死ななくてすむ世界ってのも普通にあるはずなんですな。平行世界の無限の可能性の中にはいくらだって。
 で。
 “これまでの世界と歴史や背景がほとんど違わず、設定とか人物配置が多少異なり、そして梨花が存在し、まだ死んでいない世界”とか凄い細かい条件付けまでして平行世界間移動が行える、と仮定した場合。
 ――何でさくっと梨花の助かる世界に飛んでかねえのかなー、と疑問が生じてくるわけです。
 移動するのは梨花ですから、梨花のいない世界には飛んでけない、てのはわかるんですが、梨花が存在したからといって平行世界の可能性上において必ず殺されるというわけでもないでしょう。
 抑止力でも働かない限り(笑)


 さて、こうなってくると怪しいのは彼女です。
 羽入は“梨花は今回も死ぬ”とまるで神聖モテモテ王国の展開を予想するがごとく断言しています。(あくまで態度で)
 羽入は梨花の口にする“ループ”こと、“世界のやり直し”現象にも密接に関与しています。
 ぶっちゃけ梨花の移動先に彼女が選択権を持っていても別におかしくありません。


 羽入…。
 ひょっとして、梨花にハメ技かましてないか…?



 あー。とにかく、疑問氷解でスッキリしたー。
 例のごとく当たってるかどうかはわからんが、編ごとの設定の差異と梨花の認識との微妙な食い違いに説明つけるとしたら、これくらいしか思い浮かばねえ。