閑話休題
引越しの準備にて忙しく、閑話休題。
※割とグロい話です。弱い人は注意。
<いちおう実話>
…私が大学一年の時、築二年目という新築校舎からの学生の飛び降り自殺があった。
授業時間中に六階だか七階だかから正面入り口脇に飛び降りたらしく、かなり派手に飛び散ったらしい。
ウワサを訊いて皆サークル棟から飛び出していったが、私はあまりそういうのが好きでなく見に行かなかったため、後で、ブルーシートがアスファルトに直接かけられてる(八畳〜十六畳くらいの広さに)ところしか見なかった。
その辺あえて詳しくは聞かなかったが、ジーンズ姿だったため当初は男だと思われていたというあたりからも、遺体の惨状を察することができた。
でも事件後しばらく経ってからも、異様に先輩達(女性)が怯えてるので、「…何で顔色悪いんすか?」みたいな感じで訊いてみたところ、彼女らは口を揃えてこう言った。
“去年もまったく同じ場所で、まったく同じ動機で、まったく同じ飛び降り自殺があったのだ”と。
まあ、当時の私は新聞部みたいなサークルにいたこともあって。
(当然記事にするつもりは皆無だったが)好奇心を覚えて詳しく聞いてみたところ、昨年発生した事件てのは確かに…同じ校舎で起きていた。築一年目の校舎で。
ただ一年目の飛び降りは微妙に現場を違えており、校舎裏で発生していた。
(人通りが絶えていたため、数日間遺体は発見されなかったと聞く)
家で手首を切り、そのままタクシーに乗って学校までやってきて校舎七階から飛び降りたという話だったから…相当悲惨な自殺だったと言える。
二年とも、自殺の動機は痴情のもつれ。飛び降りたのは女性。
無論、ちっぽけで閉鎖的な大学構内で発生した事件なので、ニュースでも新聞でも報じられる事はなかった。
まあ、大学生というのは暇な人種なので、こういう情報は学内に知れ渡っており、調べるまでもなかった。
で、さすがに昔の事、このあたりは少し記憶がおぼろげなのだが…自殺者のどちらかかは忘れたが、うち一人はいわゆるミス研みたいな組織の構成員だった。
多分二年目の人だったろうと思う。…まあその事はとりあえず置いておく。
で。当然の帰結として、
新校舎は学生から自殺者を輩出する呪われた校舎、とやや大袈裟に怖れられた。
まあ、このへんは根拠のない、子供っぽいウワサの類である。
大学や学生達に憂慮されていた三年目も、自殺者は出ることなく過ぎてゆき…
こうして、他愛もない怪談…『新校舎の人柱』は消え失せた。
…とまあ、この話は尻切れトンボで終わったように思っていたわけなのですが。
最近になってから気付いた。
私の大学の時の同期に作家をしている人が何人かいまして。
うち一人ってのがこういう、怪奇系の学園モノを書いていた。ラノベですが。
レーベルの主力的な位置付けにもあったから、結構売れてる作品だったのだろうと思う。
版数も重ねていたし、シリーズの巻数も二桁を数えたし。
で、その作家さんってのは、事件があって警察も出入りした、そのミス研(的な組織)出身の人なんですな。
作品に出てくる構内の描写を見てると母校のそれによく似ており、またよく似たような事件が発生したりもする。
たぶん当時の作者にもそれなりの影響を与えたんだろうなー、と思う。
ただあとがきでも一切触れられていないため、読者の人達は…ホントに似たような事が作者の身近であった、て事知らないんだろうなー、と思った。
ある意味、作品において語られなかったその事実こそが一番のミステリーだ、と思う。
事実はラノベより奇なり、なのかも知れない。
今はそのシリーズを何事もなく終え、別のものを書いているらしい。