<鉈持って追いかけてきたのは何故?>


 鬼隠し編でバットを持ち下校する圭一を、レナは鉈持って追っかけてきます。
 「宝探しなの」と鉈の所持を認めるレナ自身の発言があることからも、まあこれは圭一の妄想と思わなくても良いでしょう。


 しかしどうしてレナは鉈持って追っかけてくるのか。
 これは鬼隠し編に残された謎、とも定義されたりするわけですが、
 あるいはこれは既に、罪滅し編にて解が提示されてる事なのかも知れないな、とちょっと思いました。


 罪滅し編にて圭一とレナは校舎屋上で、それぞれ得物を手にどつき合います。
 「俺が勝ったら俺を信じろ、お前が勝ったらお前を信じてやる」
 圭一が取ったこの解決手段(?)は、タイマンというカタチだけ見ると、まるで罪滅し編冒頭の水鉄砲勝負を模しているかのようですが…。
 鬼隠し編のレナもまた同じ覚悟を秘めていた、と見る事はできないでしょうか。


 状況がだいぶ異なるため、このように解釈するのは少し苦しいのですが…。


・レナは圭一が警戒しているのは自分あるいは自分達である、と態度から判断した。
・害意のないレナは疑心暗鬼に陥った圭一に、腹を割って相談して欲しかった。
・しかし、ちょっと接しただけでバットを振り回し威圧する(怯えている)圭一とは会話が成立しようもなかった。
・なので拳で語り合うことにした。


 まあかなり乱暴なコミュニケーション手段なのですが…。
 圭一が行くところまで行ってしまっている以上、その上でなお言葉を届かせたいのであれば、罪編のレナにそうしたように対処するしか方法がない、というのもまた一つの真実でしょう。
 人気のないところまで逃げてから、圭一が思う存分バットで応戦してくれば…もしかしたら、二人は打ち合って、罪編と同じような相互理解(?)が果たせたのかも知れません。
 ですが圭一は逃げ出し、山狗と思われる男達二人に気絶させられました。


 鉈持って追っかけてきたレナに山狗たちはさぞやぎょっとしたでしょうが(笑)、恐らくその場は引き下がったものと思われます。
 山狗の任務には急性発症者の隔離も含まれてますので、露骨な暴力性を示して村内をうろつく圭一は拘束対象に認定されており、その場で確保する必要はあったと思われます。
 が…多分、圭一を気絶させた得体の知れない男二人に鉈を構えたレナに、山狗達は「入江診療所の関係者」とでも名乗ったのかも知れません。
 で、様子のおかしい息子を保護してくれと圭一の両親に頼まれていたとか適当なことを言い、事情を理解させ、気絶した圭一を連れて行こうとしたところで…レナが止めたのかも知れません。
 “皆で最後にお別れがしたいので、一度家に帰してもらえませんか”みたいな感じで。
 山狗は了承し、一度圭一をレナに預けるか、あるいは二人を前原邸まで車か何かで送ります。
 レナは圭一を自室に寝かせ、山狗は一度診療所の鷹野の元へ報告に帰り(あるいはそのふりをして電話連絡、周囲に潜んで警戒を続けていたか)、そしてレナは魅音・入江診療所に電話。
 入江は圭一を拘束する為の山狗達を引き連れ、白いバンで前原邸へと向かいます。
 圭一覚醒。
 そこへ、魅音はマジックを持ってやってきます。
 そして…。


 と…まあ大分脱線してしまいましたが、おおよそこんな感じだったのではないでしょうか。


 レナは鉈を持って圭一を追いかけていました。
 しかしそのすぐ後、撲殺される際、レナは「自分を信じろ」と訴えるのみで、圭一に抵抗しませんでした。
 罪滅し編で圭一はその事(レナが抵抗しなかった事)を思い出しますが…最終的には、レナと切り結ぶ結果になります。
 しかしそれはただの殺し合いではなく、誰も信じられないレナと分かり合うための最終的な手段であり、「俺が勝ったら俺を信じろ、お前が勝ったらお前を信じる」という約束に乗っ取った、ぎりぎりの賭けでもあったと言えます。
 また鬼隠し編でのレナは、単にもう自分の言葉が届かないだけではなく、圭一に忠告に行った魅音もまた心無い言葉を浴びせかけられ涙を流していた事も知っていましたし、…彼女が思い切った手段に出てもあまり不思議ではなかった、と言えるかもしれません。
(まあ、それにしたってあまりに男前過ぎますが…)

 
 長くなりましたが、つまり――
 鬼隠し編で鉈持って追っかけてきたレナも、バットを持って逃げる圭一の背中を見ながら、罪編の圭一と同じような事を考えていた可能性がある、と言えるかも知れません。


 乱暴な解釈ですが、罪編のあのラストバトルは、鬼隠し編終盤にレナが取った行動の解でもあった…のではないでしょうか。