<圭一の最期にまつわるいくつかの謎について>


(圭一の聞いた足音とは)


 圭一が死ぬ前日あたりにナースコールで残した「足音が、また一つ余計に…」、これは羽入の足音を感知したものだったのか?
 またそうだとすると、梨花死亡の半年後くらいにも羽入は祟殺し編の世界に存在したという事になってくるが、それなのに(皆殺し編に至るまで)真犯人の正体をまったく掴めていない、というのはおかしくないだろうか?


 解釈A:足音は確かに羽入のものだった。


 まずこの解釈をするにあたり、羽入が梨花死亡後に祟殺し編の世界にも存在している可能性を証明せねばなりません。
 そこで、皆殺し編から祭囃し編へ移る際の梨花と羽入との“ズレ”を挙げます。


梨花皆殺し編ラストで殺される→
 記憶を失い、祭囃し編Cパート冒頭(昭和58年6月12日)へ


羽入:皆殺し編ラストで梨花の死を見届ける→
 祭囃し編の昭和54年以前、研究所設立時に神社へお参りに来た鷹野へ向かって、彼女こそが真犯人であると告げる→
 祭囃し編Cパート冒頭(昭和58年6月12日)、死亡直前の記憶を失ったままいつものようにループしてきた梨花に対し、真犯人の名を告げる


 少なくとも“皆殺し編祭囃し編”においては、羽入は梨花の主観移動に従った移動をしているわけではない、という事がここから証明されます。
 しかしながら、羽入が語る「梨花の死亡直前の記憶が梨花同様に曖昧になっている」というのは恐らく真実だと思われます。
 なぜなら、他編での梨花の死因には鷹野達によって手を下されたと思われるものが少なくありませんし、そしてそうであったにも関わらず、羽入は彼女が真犯人である事を祭囃し編まで断定できずにいました。


 …じゃあ、祭囃し編の羽入が昭和54年以前に出てきたり、また梨花が鷹野に殺された事を“憶えて”いるのは一体どういう事なのか? と考えると。


 梨花はある編で死ぬと、他編のそれまで存在した梨花に“割り込み”をかける形で蘇ります。
 ――しかしここで。
 羽入が数多の世界(編)そのものを俯瞰視できるような唯一絶対の神的存在ではなく、世界(編)それぞれに存在する、並列的なモノであると仮定してみます。
 その上で、かつて罪滅し編で羽入自身がそう語ったように、梨花とある程度似たような現象が彼女にも起きている…、とさらに仮定を重ねてみますと。


 梨花死亡→連続する記憶を保持した意識は他編の梨花へ→他編の梨花上書きされる
 これに従って羽入の意識も移動→(梨花よりも時間的にずっと以前の段階で)他編の羽入の存在、上書きされる


 …こうなります。 
 この場合問題となってくるのは梨花死亡後の羽入ですが、“連続する世界の記憶だけを失ったまま”その後も存在し続けると推測されます。
 つまり…梨花が死んでしまった編での羽入は、(他編から割り込んできた際に持ってきた)「梨花と自分の意識に対しずっとループを発生させ続けている」という事実と、その間およそ百年分に渡る記憶、そして、その編で“梨花のループ”に使われた期間の記憶だけを無くしたまま、…その後も元々この世界に居た羽入として存在し続ける事となります。


 で、ここで圭一の話に戻るんですが。
 かつて茨城で暮らしていたレナはオヤシロ様を見たと語り、また雛見沢においてはいつもそばに居た羽入の存在をなんとなく認識していた模様です。人間ではないと知りながらも。
 これを雛見沢症候群がもたらす知覚とした場合、祟殺し編の圭一にも同じような知覚が発生していたことが推測されます。
 つまり…、圭一は本当に、祭の夜の最後に誰かの足音を“聞き取ったり”、あるいは入院先の病院で足音を“聞き取ったり”しているわけです。
 前者は、状況の流れからこの編での末期発症する人物を先読みし、圭一の凶行を見守っていた羽入であり、
 そして後者は、ループ中の記憶のみを失った、この世界にはじめから存在する羽入の足音であった。(雛見沢の唯一の生き残りである圭一を見守っていた)
 さらに言うと、昭和54年以前に鷹野の前に現れた羽入は、(何らかの理由で)梨花死亡直前の記憶を維持したまま、この時すでに皆殺し編から飛ばされてきていた羽入であった。


 …とまあ、こういう解釈がひとつ。


 解釈B:羽入などそこには存在せず、単なる症候群の症状だった。


 おはぎの中に針、「学校休んじゃ嫌だよ」、などなど、症候群の症状には幻覚も含まれます。
 被害妄想で認識が極度に歪んでいる以上、視覚のみならず聴覚にまで幻覚が発生しているとみなしてもいいでしょう。幻聴ですね。
 つまり。圭一が聞いた音には実際の羽入の足音も含まれていたが(鉄平殺害日の夜)、死ぬ前日あたりに聞いた足音は幻聴であった。
 その頃には羽入はもう祟殺し編の世界には存在しなかった。


 …と、こういう解釈がひとつ。


私としてはAの方が面白いと思うんですが、たぶんBが正解なんだろうなぁ。
理由は後述。




(圭一はなぜ死んだのか)


 祟殺し編にてインタビュー推定二日後くらいになぜか逝ってしまう圭一ですが、これが感染者を処分する必要のある山狗の犯行だったとすると、なぜ半年も待ったのか。
 事の真偽はどうあれ、政府の上の方は女王感染者を失った症候群感染者が凶暴化するとみなして全村民を抹殺したのだから、「結果的に凶暴化しなかった」例外的位置付けとなるだろう圭一も、山狗からしてみればさっさと始末しなければならない存在だったのではないか。


 解釈:諸事情により殺すメリットの消え失せた圭一はそのまま放置され、ふと症候群をより悪化させるきっかけを得てしまい、死んだ。


 まず圭一を処分する必要についてですが、このへんは祭囃し編で圭一が取った作戦ともちょっと関係してきます。
 彼らの作戦の勝利条件は、「梨花が死んでる事にして遺体の確認をさせないまま48時間逃げ回る」でした。これは終末作戦の遂行に大きな支障をきたし焦る鷹野&山狗をいぶり出す為の手でしたが、ここでポイントなのは、目明し編エピローグからも判るように、梨花が実際に死んでいたとしても48時間後には何も起こらなかった、という事です。(もちろん圭一達はそんな事考えもしませんが)
 つまり。祟殺し編梨花の推定死亡時刻は21日未明です。
 圭一が分校前に到達、保護されたのが22日朝〜昼でした。
 この段階では雛見沢はすでに災害出動の一般部隊に引き継がれており、山狗達の制圧下にはありません。
 そして直後に、恐らくは硫化水素を吸い込んで圭一は肺水腫で死にかけました。
 (倒れる時の描写があまり肺水腫っぽくないので偽装の可能性も高いですが)
 圭一の蘇生措置、治療はあまり人が近づけない場所で行われたと推測されます。
 (現地はガスが充満しているため、恐らくは完全機密性の医療テント内などで治療されたと思われる)
 諸々の事を鑑みて、少なくとも24時間は殺意ある誰も近づけなかったのではないでしょうか。
 要するに。発症の危険性があると見なされていたはずの圭一は、何も知らない自衛隊一般部隊の医療班によって48時間のリミットを越え、“別に末期発症なんてしない”という患者の実例を示した事で、今さら消される理由もなくなってしまい、結果的に生き延びた…命を救われる結果となったのではないでしょうか。
(もちろん、引越してきたばかりの例外的な村民だから患者ではなかった、と結論付けられた可能性もあるが)


 そして、入院していた詩音は症候群の症状悪化により自殺。
 (祟殺し編の詩音は、祭の前日夜、圭一から悟史と同じ内容の電話を受けた事で発症のスイッチが入ってしまった可能性が高い。鉄平の死体消失や、魅音達のアリバイ工作など、詩音が何らかの助言あるいは裏で実際に動いていたと考えられる事も多い。また、沙都子の事情や、魅音に祟りの相談・祭前日に沙都子を頼むと電話してきたりする圭一の不審な挙動を知る位置にいながら、圭一自身の犯行を阻止しなかったのは、目明し編での彼女の行動パターンと同じように“圭一を泳がせていたため”…とも推測できる。)
 治療によりどうにか死なずに済んだものの、圭一も祟殺し編ではやはり完全な発症者なわけで、同様に自殺未遂を起こし、サナトリウム的な施設に送致。
 そして、そこであのインタビューを受け、(症状を進行させない為には精神の平安が重要だったが)人を呪い殺そうとするような真似をし、自身の症状を重くさせてしまい、二日後に衰弱死。


 …と、こう解釈してみました。
 この解釈だと、圭一が倒れた時に「何としても生かせ!もうこれ以上絶対に死なせるな!死んでいい命なんかないんだァァ」と叫んでいた自衛官の人がちゃんと圭一を救ったみたいにも思えるので、私はこれを支持したい。(お前の趣味かよ)




(あのインタビューは本物か? インタビュアーの死の原因は?)


 警備の厳しそうな医療施設に圭一は入院していたわけだが、あのインタビューテープは本物なのか。
 また、インタビュアーの記者の危難失踪は本当に偶然なのだろうか。


 解釈:本物でいいと思う。
    偶然でいいと思う。


 まあこれに関しちゃさしたる論拠もないのですが、死ぬ前に圭一はナースコールで「足音がまた一つ余計に」と言っています。
 つまり、この言い方からするとこの時の圭一は歩行可能な状態であり、また実際に歩いてもいただろうという事が推測できます。
 つけくわえるならば、死亡のタイミングから言ってインタビューが症候群悪化の直接のきっかけだった…と考えると、それまでの圭一は雛見沢症候群の悪化を抑えるような、それなりに心穏やかな環境で生活する事ができていたと推測できるわけです。
 要するに、外側の警備は厳しい施設だったかもしれないが、患者が自由にあちこち歩き回れるような、内側の警備は緩めの施設だったのかも知れない、と考えます。
 ゆえに。このテープにあったようなインタビューなどが実際に行われたと考えても良いかと思われます。


 …一応、他殺説なんぞを考えてみますと。


大穴:インタビューの間中、羽入はずっと、野次馬根性丸出しで雛見沢の名前を出す記者やオヤシロ様を祟り神のように語る圭一の言葉を聞いていた。
 キレた。
 圭一に付きまとって足音を鳴らしたら、たった二日で死んでしまった。
 そして十年くらい後、記者の後をつけていき釣り船の上で足音を聞かせまくり、ビビらせてみたら、記者は「クールになれ…。クールになれ記者…! そうだ! 海に飛び込めば足音なんてもう聞こえないじゃないか!」と、圭一か雲雀13でもない限り思いつかないような名案を閃き、むしろ嬉々として海に飛び込んだ。(その後当然おぼれた)


 …。いやこれはさすがに。ないよね。




祟殺し編でリナを惨殺したのは?)


 アパート裏のドブ川に捨てられた惨殺死体となって発見されるリナだが、
 これは一体誰が殺したのか。
 園崎がこんなわかりやすい殺し方をするとは思えないし、
 山狗にも消す動機がない。
 またレナの仕業とも思えない。
 じゃあこれは一体誰がやったのか。


 解釈:園崎組の見せしめじゃないかと思う。


 億クラスの金を盗まれたわけで、しかも複数犯。残りの連中は高飛び済み。
 これだけの真似をされて、以後内外ともに舐められない為には多少の見せしめも必要という事なのでしょう。…残虐な考え方ですが。
 あの拷問はどうみても単にホステスに金持って逃げた男の居場所を吐かせる為にしてはやり過ぎですし、見せしめとしての意味の方が強かったものと思われます。
 ペット用首輪にダンベルをくくりつけてドブ川に沈めてますが、刑事の人も言ってたように“こういうのは隠す気がない”。これは恐らく正解でしょう。
 皆の眼に触れる形で発見させなければ、あそこまで惨たらしい殺し方をした“メリット”がないだろうと思われます。
 リナが皆殺し編においても全く同様の末路を遂げているらしい事から考えても、やはりこれは、それなりに強い意思の結果……つまり、リナによる金盗んで逃げる計画発動→園崎組による見せしめ、という展開の結果なのではないかと思われます。




 今日はとりあえずこんなとこで。
 いろいろと自分なりに考えて解釈を書いてみたのですが、真実はもっとシンプルなものかも知れません。
 私好みのねじくれたAではなく素直なBが正解かも知れません。いや流れ的にたぶん。


 今後は、鬼隠し編あたりの残された謎あたりから解釈をつけて行こうかと考えていますが、閲覧者の皆様におかれましては「この謎がどういう事だったのか知りたい」という質問等ございましたら、今日の↑のように記事形式で返答して参りますので、どうぞ遠慮なくコメント欄の方に「今すぐ知りてえんだよ! 貴様の解釈を聞かせやがれ!」などと書き込…言葉を慎めこの野郎。(←正気を取り戻して下さい)
 ではでは。