礼感想

総プレイ時間は四時間ほどでした。
あーあと、コレで検索されて来られる方が多いようなんで一応書いておくと、
目明し編ではなく礼の)お疲れ様会の最後のタイトルロゴで、いつものごとく「礼」をクリック連打すれば扉は開かれん。
そして内容の方はもはや正直ついていけん。



賽殺し編感想>*ネタバレ含む




 いや。いやいや。凄いね。何が凄いって二時間でこの話を展開できるのが凄えよ普通に。
 思わず時計を見直したね。でも本当に二時間しか経ってなかったね。



 まあ前の記事のおバカな予想でもちょっと触れたんですが、確かに、100年振りの予測不能な世界でしかも勝利に浮かれている梨花のガードは下がってるだろうとは思った。ああ思ったさ。でもそのうっかりで即死するとまでは思わなかったね。
 そんでその結果、一月くらいしか堪能してない100年間分の努力の結晶を一発でおじゃんにするとは思いもしなかったね。
 多分恐らくきっと、この編のタイトル候補には斑壊し編(ぶちこわしへん)とかも含まれてたと思うね。空気読めないデストロイヤーっぷりにも程があるってもんだね。


 編選択画面での紹介文では“難易度が意地悪”となっている訳ですが、これは梨花が前例のない世界にいきなりぶっ飛ばされた理由を証明せよ、的な意味かなあと思いつつ、読み進めてみました。
 でまあ、梨花の飛ばされた世界の成り立ちというのは、ぶっちゃけ梨花にとって不愉快ながらも、仲間達自身からしてみれば幸せに違いない世界であるわけで。
 また同時に、非常識的な存在がなく、常識の支配するマトモな律の治める世界にもなっていると言えるわけです。
 世界の成り立ちはそれこそ初見、飛ばされた時間も初めての座標、加えて言うならばそもそも時間軸上の移動が発生していないというイレギュラーっぷり。
 …つまり。
 梨花はただ偶然にそんな世界にぶっ飛んでいったわけではなく、送られた世界の成り立ちには、誰かの意思思惑が関与しているだろう…というのは明白なわけで。
 で。その誰かってのが一体誰か――という事を考えると羽入くらいしかいないわけなんですが。


 …しかしそう考えると、ここで問題が出てくる。


 (元)部活メンバーがそれぞれ不幸の種を抱えておらず、部活を通じて仲良くなる理由がないとは言え、その上で敢えて梨花が疎外され孤立しているという現状。
 これはまるで、不幸がなければ、皆の心に隙間がなければ、梨花には皆と仲良くなる機会など自然発生しないと言わんばかりの待遇です。
 つまり、梨花がこれまで渇望し続けた幸福な日々とは、皆の不幸という前提の上に成立するモノである…と羽入は訴えたいのか? と考えたのですが、なぜそんな事を訴えようとするのかがわからなかった。




 で、最後まで読み進めた訳ですが。
 …いやー、まさか母殺しとか浄罪とかと絡めてくるとは思わなかった。
 梨花がなぜそのようなイレギュラーな世界に飛ばされたかは明確にはされませんが、「羽入の存在を結果的に拒絶すれば皆が罪のない世界に生き続ける事ができる」という辺りから考えるとやはり、かつて子に己を殺させて多くの罪を濯ぐという奇妙な自己犠牲を選択した羽入なりの“親心”の顕現であり、つまり羽入が全部意図して行った世界移動なのではないか…と思ってしまいます。
 元の雛見沢を選択する為の鍵としてわざわざ母の殺害が条件となっていたのは、罪のない世界を捨て罪まみれの世界を選択する過程において最大の痛みを課す為でしょう。まあ確かに、元の雛見沢を選ぶ梨花のその選択によって皆の人生が不幸まみれになるわけだから、梨花自身にも実母を殺すくらいの禁忌に手を汚して貰わないと贖罪にもなりゃしない、という重い意味もあるのでしょうが。
 羽入は梨花がどっち選択しても自分は幸せなのだと明言していましたが、…腹の中じゃやっぱり、その世界に梨花が留まる方を望んでたんじゃないかねぇと思う。
 どちらも簡単には選べない選択肢とは言え、やはり冷静に見ると条件とか全然対等じゃないし。


 残る疑問としては。
 最終的に梨花は渇望していた元の雛見沢(夏の続き)に戻ったわけですが、羽入は…やはり実体化してないようですね。
 そもそもトラックに轢かれる前のシーンにも出てきておかしくない羽入が出てきませんし、となると祭囃し編のあの転校生羽入は一体何だったのだろう、賽殺し編祭囃し編の後に続く話ではないのか、という事になるわけですが…。
 まあこの辺りは矛盾を孕んでた方が面白いか。


 で。
 二時間を倍くらいに感じさせてくれたこの編に。
 私は改めて、感動の意を表したい。


 …“涼宮ハルヒの消失”と。




(頑張って書いた感想がぶち壊しな上に両者には1ミクロンも共通点ありません)




昼壊し編感想>


 キャラクター達が知略を尽くして潰しあうという事はなく、完全無欠に少女漫画でした。出題編各編の前半部みたいなノリ。
 「礼」ゆえに、礼奈ことレナ押しの話だったのかも知れません。
 前半部のみでまとめて終了。という感じだったので、ずっと以前に作者氏が語っていたFDの内容に一番近いモノかも知れません。惨劇に繋がらない日常、みたいな。




目明し編お疲れ様会感想>


 というかこれ目明し編買った時に普通に読んだ記憶あるっていうかある意味最もサイコなテキストちゃうんかと。
 再収録せずそのまま封印しておこうよと。
 疑問に思い改めて確認したのですが、目明し編以降の解に収録されていたのは目明し編の「スタッフルーム」であって、お疲れ様会じゃなかったんですね。
 でもこれは忘却の彼方に追いやられるべきテキストだと思う。いやいやマジで。


 全年齢対象のラインを(無意味に)ぎりぎり低空飛行で潜り抜けつつもこんなにも病的な嗜好満載のデパートみたいな文章なんて滅多に見られねえよ。
 しかも使用単語だけ見るならばこのままでも難なくCEROを通過できそうなのが恐ろしい。
 本編前半部以上のマッドネスぶりで、物凄く不健全で物凄く有害なのに、特定の単語を論って咎めようがないというのは凄い。
 そのくせ100人が見て100人がデンジャーと判断できそうなその高危険度も凄い。


 なぜにわざわざこのような“ネタとしても危険物”をFDで収録したのかと。
 近々発売のPS2版にて各編のお疲れ様会は実装されてても不自然ではないわけですが、…この目明し編お疲れ様会だけはやはり漏れた、もしくは作り直しを余儀なくさせられた…という事なのだろうか。


 あとちょっと気になったのは、「いいだッ!!」とか訂正されてない誤字が残ってましたね。
 「沙都子をかくまってやればいいだよッ!!」とか、圭一はひょっとして時々チチみたいな口調になるという裏設定でもあるのか。悟空さ。
 全編通して“いいんだよ”から“ん”が抜け落ちる誤字を割と見かけた気がするので(私の気のせいかもしれませんが)、作者氏は今後もテキスト書き終えた後にCtrl+Fなり何なりで「いいだ」を検索して、「ん」を付け足せばラクに誤字減らせるんじゃないのかなあと思う。私にゃこれっぽっちも関係ねえが。
 まあ、もう既にその誤字はネタの一部であるのなら話は別か。(笑)



 総合的な感想としては、楽しめる作品でした。
 FDだから昼壊し編のような雰囲気でまったり流すかなーと思ったのですが、賽殺し編は本編の重い流れをそれなりに受けた作りになっていて好感が持てました。
 仮称うみねこの情報は出てきませんでしたが、ちゃんと次回作にも期待が持てる内容だと言えた。失望せんかった。




 以下ちょっと思ったかなりどうでもいい事を書く。
 …山奥の寒村→島もしくは半島、という舞台のチョイス(変遷)について。
 半閉鎖環境というか半クローズドサークルは、ひぐらしの書き方見てると正直ギミックとしての価値があんまりないんじゃないかと思う。
 ミステリの皮を被った、ギャルゲの皮を被った、最終的にはミステリでもギャルゲでも何でもない別の何かとして「ひぐらしのなく頃に」を定義した場合、舞台も登場人物も絵柄も含め、それらは擬装網くらいの役割しか果たしてないと言える。
 露骨な密室殺人は避けるにしたって、青空密室殺人とか普通に書ける筆力持ってるわけなんだから、閉鎖傾向のある舞台を利用するんだったらもっと密室性を前面に押し出した事件を書けばいいのになー、と思う。
 家庭という密室。村社会という密室。といった様々な密室性は勿論ひぐらしにも登場しているわけなんですが、その密室性は謎を深める為の徹底した不透明さとしてしか利用されてないように思われる。もったいない。
 例えば密室性が犯行の不可能性に直結するようなケースは実はひぐらしでは殆ど出てこなかったので、ぜひその筆力を用いてまた違った角度からも再びプレーヤーを騙して欲しいなあと思う。