<圭一の主観時間のズレから生じる奇妙な雛見沢>



…前々から、ちょっと気になっていた説がありまして。


http://rena07.com/Cgi/cbbs/micbbs.cgi?mode=al2&namber=25945&no=0



 “祟殺し編終盤で圭一の主観時間にズレが発生していたのではないか”、という考え方です。

 簡単に要約すると、

 祟殺し編最終日、昼前〜昼頃の時間帯に圭一は目覚めるわけなんですが、その後自衛官に日時を確認し、圭一は自分の昏倒が「21日(火)朝〜22日(水)昼」の約一日ちょいだった、と結論付けています。(一日プラス二時間程度だったり、一日半だったりと圭一の供述には少し差があったりもしますがまあそのことは措きます。)
 “この時間が一日半ではなく実際は半日だったのではないか”


 そして、


 “その結果発生する空白の一日っていうのは、「皆が言うように圭一が祭りに出て大暴れしていた一日」で、圭一は何らかの理由により記憶を失っているのではないのか”


 という考え方です。
 ――つまり、19日鉄平殺害、20日祭開催、21日遺体発掘、22日北条家乱入・大災害 というカレンダーであるとする考え方なわけですね。




 ――しかしながら、この考え方にはどうしても不可避な矛盾が存在してまして、

1…22日朝には雛見沢は滅んでいるらしいのに、圭一は普通に5時前に起床、老人、沙都子、小宮山、警官、男性医師らの姿を見かけてもいる
  (ちなみに圭一がうろうろしていた時間帯は雛見沢付近の住民からガス発生に関する苦情、通報が相次いでいた時間)
2…祭が雨天中止となり翌20日に開催されていたとなると、祭で富竹の部活参加が目撃されている以上、富竹の死亡日時が20日にならなければおかしい、エピローグで流れる被害者一覧の死亡日時と矛盾する
3…同様に、監督、梨花の死亡日時も22日朝にならざるを得ない

 これらの矛盾点をクリアせねば、この説は証明できません。



 

 そんで、色々考えてみて、こうじゃないのかお前!?という説を思いつきました。
 あーもう、今回の記事は一際長くなりそうなので結論先言いますけど。
 「圭一が鉄平を殺したのは祭の日でもなければ19日でもないんじゃないのか」って事です。


 
 こまかく説明してゆきますと……。


 まず、
 圭一が昏倒していたのは実質半日弱、とした場合、圭一は大災害の朝に普通に目覚めているわけで、こいつは圭一の目の当たりにする他の状況から考えても、ありえません。
 てなわけで、圭一が気絶したのは本当に21日(火)朝、圭一のダウン時間は一日半だった、とします。



 と、この時点で一日の空白時間がなくなり、「主観時間のズレ」の説は消えそうではあるんですが、もうちょっと考えてみましょう。




 鉄平殺害後、皆の態度がおかしくなる理由が「圭一が前日の記憶をきれいに失っているせい」である、とした場合、その記憶のすっ飛んだ一日というのは一体、何月何日のことになるでしょう?


・殺人翌日、「圭一が祭りに出ていた」と皆が口にする
・殺人翌日、死体が埋めた場所にない
・殺人翌日、相談した監督が圭一を「昨日の記憶が完全に混乱。」と断定


これらの事から、仮に圭一が記憶を失っている一日が存在している場合、その日というのはつまり、


・祭の日であり、
・死体が移動された日であり、
・監督がその日の圭一の行動をそれなりに把握しており、圭一が「祭なんて行ってねえ」ととてもリアルな描写で“昨日”やっていた事を語って見せたのに、精神異常・記憶の混乱・作話などと断定せざるを得ない日


そんな日であると言ってもよいでしょう。



……で。
21日を圭一気絶日とした場合、その前日の20日が遺体掘り出し日となります。
20日というのは、圭一が学校に行って違和感を覚える日ですね。
つまりこの考え方だと、19日に圭一は記憶を失っていた、という事になるわけです。



しかしながら。
まず、19日には富竹や鷹野が死んでいます。
そして祭の日には富竹の部活参加が語られてもいます。
圭一はそこで散々遊びまわったように皆の口から語られていますが、
しかし圭一は祭の日に鉄平を殺害するべく、前日から準備をし、当日も殺人行為に及んでいます。


つまり、
19日に祭があったのを正とし。
19日に富竹や鷹野が死んだのを正として、
入江が「祭当日は日曜日だった」と語ったのを正とした場合。
……導き出される結論としては……圭一は19日(日)、祭に参加していて、そしてその前日、18日(土)に鉄平を殺そうとしたのではないでしょうか。



 ただ…圭一は多分、綿流しの開催日が19日だと考えています。
 圭一は日付の把握が一日ズレていたのですが、そのズレは、19日の記憶がすっ飛ぶ事によって修正されてしまいます。
 で、村が本来、綿流し祭の開催を予定していた日が18日(土)なわけです。



 この説明だけだとちょっとわかりにくいですね。
 なので、上の参考URL(魅ぃ掲示板)で推理されてます内容に、私なりの憶測を加え、祟殺しのラスト5日(祟殺し11日目、12日目、13日目、14日目と、12日目の「前日」)を、時系列にまとめてみました。




==祟殺し編11日目==6月18日(土)

・圭一の脳内では19日
・綿流し祭の開催予定日。
・圭一は鉄平を誘き出し、鉄平のバイクで通りかかった男を殺害する。
・途中、浴衣を着た家族などとすれ違い、開催されているだろう祭の事を思うものの、しかし実際には祭りは雨天中止となっていた。浴衣を着た家族は無駄足。


==祟殺し編12日目の「前日」==6月19日(日)

・圭一の脳内では20日
・昨日延期された綿流し祭の開催日。
・翌日、圭一は目覚め、祭が今日に延期になっていたことを知る。あと今日が20日ではなく19日で、日時把握のズレも自覚する。
・沙都子の問題も解決、鉄平殺害という重荷も降ろし、昨日までの陰鬱な態度とはうってかわって、部活の皆と思う存分遊び回る圭一。
魅音に誘い出させたものの、沙都子は途中で帰ってしまったので合流せず。
・しかし圭一はもう鉄平が帰ってこないことを「知っている」ので、沙都子はもう安心だが、それでも叔父の帰還を憂いしばらくは神経質な日々も続くだろう、そっとしといてやるか、と沙都子を気遣い、放置。(←21日の登校途中のモノローグに似たような表現が出てくる) 圭一は祭で心置きなく遊ぶ。鬼隠し編綿流し編くらいの内容。
・祭会場のテントで酒を飲んでいた入江、圭一の大暴れを耳にする。
・富竹を引き込んで部活勝負。
・別れた後、富竹死亡。鷹野死亡。
・祭が終わっての帰り際に、沙都子のことに話が及ぶか、あるいはまるで沙都子の問題を放擲したかのように思いっきり遊んだ圭一の不審さに話が及ぶかする。
・どちらの話にしても、言葉を濁す圭一。もう問題はないとか心配ないとか曖昧な事を言う。
魅音あたりが、「でも叔父の奴、相変わらず沙都子につらく当たってるみたいだったし…。今日だって」
・「え……?」固まる圭一。「魅音お前、今なんて言った…? “今日”……?」
・殺したはずの男が北条家に居たけどと訊き、北条家に飛んでゆく圭一。
・怒鳴り声などで叔父の所在を確認し、「嘘だろ…?」となる圭一。
・遺体を掘り返しにゆく圭一。
・殺したのが別人だと気づく圭一。
・豹変した圭一を追跡してきた魅音とレナが、掘り返した遺体のそばで放心している圭一を発見。
・大体の事情を察し、二人で別の場所に埋め直す。恐らくはダム工事現場跡のゴミ捨て場。
・深夜、圭一を自宅に送り届ける。
・圭一、就寝。ショックから、起きた時にはこの日一日分の記憶を失っている。


==祟殺し編12日目==6月20日(月)

・翌日、圭一起床。記憶を失ったまま、自分は叔父を殺した、と再確認。
・圭一の日付把握のズレが記憶喪失によって修正される。
・夕べは何時に帰ってきたのと母親に怒られる。
・学校へ行くと皆が「祭に出ていた」などと変な事を言う。
・沙都子が「叔父が普通に家にいる」などとおかしな事を言う。
・(嘘だろ…?)と取り乱す圭一に、事情を知り、昨夜のショックを受け放心する圭一を目の当たりにしているレナと魅音は、圭一をゴミ捨て場に連れ出そうとする。(圭一に自分達がどう始末をつけたかの事情を説明するか、あるいは遺体を埋めなおした場所を教え状況を理解させようとしたのだろう)
・「何故圭一は鉄平がいないなんて思うんだ」「いるって言ってんだからそれでいいじゃん」「そのうちどうにかなっちゃんだしさ」という二人は、圭一の事情を知った上で喋っている。加えて、鉄平自身もじきに消される事が既に決定している。
(↑祭前に入江が口にした言葉と似ているのは何故なのか、やはりグルか)
・圭一、病院へ行くといい二人から逃げる。圭一のためにしてやった事なのにと腹を立てる一方で、圭一を気遣う以上、レナは病院行きを了承する。
・圭一、入江に鉄平殺害を告白。しかし入江は昨日(19日)の祭で騒ぎまわる圭一の存在を、自分の目で見たわけではないが、色々な人の口から確認しているので、「自分は祭には行っていない」「祭の時間中鉄平を殺していた」と話す圭一はそれこそ、急性の精神障害の発症者か何かにしか見えない。圭一は興奮してもいるので、錯乱しているのだろうと判断。
穏便に眠り薬で拘束しようとするが、圭一に気づかれ、逃亡される。
・診療所の窓から逃亡する圭一を警邏中の大石に目撃され、入江は大石にその不審を糾され、「錯乱だとは思うのだが、前原圭一が殺人の告白を行った」と白状させられる。
・圭一、遺体を掘り返しにゆくが、既に穴掘り用具と人員を携えた大石に尾けられている。
 埋めた場所を掘り返すが遺体はない。
 大石がやってきて穴を掘らせ、圭一を締め上げるが、やはりそこには何もない。
・大石、圭一を入江が口にした通りの精神異常者と判断。放置。


==祟殺し編13日目==6月21日(火)

・5時前圭一起床。北条家へ。
・ナタを自転車に突っ込んで老人と挨拶。
・沙都子救出。叔父の生活痕はあるが姿はない。
・入江医院に行き男性医師、小宮山、警官らを目撃、入江の死を知る。
・古手神社に行き梨花の死体を見る。
・逃げる沙都子を追って吊橋から突き落とされる。


==祟殺し編14日目==6月22日(水)

・昼前か昼あたり、圭一覚醒。
・雛見沢へ帰ろうと道を探す。
・村を覆う異臭と無数の虫の死骸に気づく。
自衛隊に保護され、災害の発生を知る。
・軽く死にかける。



 以上。


 圭一が都合よく記憶喪失になったのはやはり、散々計画して殺したのに、バイクまで同じだったのに、乗っていた人が違う人だった、違う人殺しちゃったという運命の悪戯に対するショックでしょうかね。
 
 ちなみに、綿流しの開催予定日が6月18日で、他の編と違うというのはちょっとなー、とも思ったんですが、よく考えたら「綿流しが開催された」のは19日なわけであり、てんで問題ないんですね。圭一の脳内でも多分、始めから綿流しの開催日は6月19日だろうし。

 日付の把握のズレは、叙述トリックのアレです。
 祟殺し編の中盤に、保護欲を燃やす圭一の日付把握のうっかりぶりが露呈されています。
 アレです。17回斬ると17分割のアレです。(その説明じゃわかんねえよ) 



 この説は――珍しく、結構自信ある。
 ああ……やっと、考察サイトが名乗れる気がするよ……。
 (そんじゃ今までは何だったんだよ)



 実は、スクリプトのスの字も知らない私が、負け犬さんのオリスクまとめページで勉強したり、書散し編に参加したりしたのは――ここで延々と考え続けているてめえの推理でもしもマシなものが出来たら、その時はスクリプトで提示してみたいという思いがあったりしたからでもある。
 なんでスクリプトなのよと言うと、私が推理を展開する際のデフォルトクソ長い文章は、読む気を減殺させる成分がとっても含まれているからである。
 …要するにぶっちゃけ、こいつのオリスクを作って、本編祟殺し編の11日目をプレイした後にこいつを起動、読み終えた後で本編12日以降をプレイしてもらえば、実に読みやすく解りやすい仮説の提示ともなるだろうし。
 って面倒臭えなそれ。都合三回も起動すんのかよNスクリプト


 「祟殺し編11.5日目」。
 ちょっと作ってみるか…。



<考察以外の記事>

ひぐらしオリジナルスクリプト、「ひぐらしは鳴き止み」が公開されておりますよ?ということで、さっそく楽しませて頂いたわけなんですが……


ゴハッ(吐血音)


 何よこのクオリティの高さ……!
 高い演出効果と全編を通して維持される本家らしさを漂わせたこの文体……!
 そしてクリックで噛んだり余計な間で引っかかったりという事の全くない、このプレイヤーそれぞれに異なるはずの思考速度・プレイ速度をよく慮った、ユーティリティー(…ユーティリティーか?)の整備っぷり…!



 あああ悔やまれる。

こうして完成度の高いオリスクを見ると、私が「これは…直さなくても…別にいいよね…パトラッシュ…(←26時間タグを打っていたせいで幻覚が見えている)」と見過ごした部分が激しく悔やまれます。



 くぅ…。ここまでやって一人前、って事かよ…。
 凄いぜ半魚鳥さん。