アニメ1〜4話 鬼隠し編感想

 というかアクセスが多いのなら、アニメ絡みの検索でヒットするのなら、このブログでアニメの(推理要素関連の)感想書きゃいいじゃないか、という事に気付きました。
 あ、一応。1編2時間くらいで収めなきゃならんアニメとしての演出上、わざわざ突っ込んだって仕方ない部分は多々あるだろうさ。と前置きをしときますね。


<アニメ1〜4話 鬼隠し編感想>


都会から越してきた転校生の圭一は楽しい村で愉快な仲間達と仲良く暮らしていましたがふとした拍子に村も人も恐ろしげな顔を覗かせたため疑心暗鬼や迷走の果てに友達二人を手にかけて不審死を遂げました。


 鬼隠し編のあらすじを三行で書くとこんな感じになるかと思う。読点使おうよ。
 で、1〜4話は限られた時間の中でこういうストーリーラインを見事に再現してのけたと思う。ただ演出にまったくといっていい程“溜め”が使われていなかったので、「こういうイベントがありました」「次にこういう事が起きました」と淡々と列記している印象は拭えなかった。描写イベントに従ってどんどん劇中時間が移り変わるので、話の大筋は追えるんだけど話の整理がつけづらかったかも知れない。
 アニメではあの作業服の人たちの露出が多かったようにも感じますね。原作とほぼ同じ動きしかしてないんですが、原作では立ち絵なかったからな。
 悟史のバットを見た時の沙都子の反応は原作にはないものでしたが、ああ反応するのが普通だろうなあ。
 撲殺前のシーンで「監督」の言葉の意味を圭一に脳内変換させなかったのは勿体無かったと思う。このシーンくらいもう少し時間使ってよ。
 事件終結後にいくつか判明した事が提示されるわけなんですが、これらはやはり6月中という事になっていましたね。(まあ…あの人の行動次第によっては、これが7月だっていい場合もなきにしもあらずと言ったところなんですが…)


 原作と推理要素の面で比較してちょっとどうなんだろ、と思った部分としては、作業服の人が白のワゴンでバックしてきて、登校途中の圭一を撥ねようとするシーンです。
 回避されて舌打ちまでしていましたが、これは原作では描写されていません。
 …ギリギリネタバレにはならんと思うので敢えてここで書いときますが、彼が舌打ちをしたという事は、本気で撥ねる気だったか、あるいは撥ねるのにわざと失敗して舌打ちをしてみせた(わざわざクラクション鳴らしながら突っ込んできたし)、のどちらかになるのではないかと思うわけです。
 ただ、鬼隠し編だけを見て作業服の人たちのスタンスを推理する上で、この要素はひどく混乱を招くだけのように思うので、舌打ちの描写はなくしといた方が良かったようにも思う。




(以下強烈なネタバレ感想。皆殺し編まで未読の方は見ない方が吉)



<白ワゴンは本気だったかどうか>


 と、10行くらい前で書いた事についてなんですが、山狗がワゴンで突っ込んできた真意はやはり後者の方、つまりクラクション鳴らして突っ込んできて轢くのに失敗して舌打ちをしたってのは圭一に「見せる」意味合いがあったんじゃねえかと思う。
 なぜかというと。以下は、前に書いた考察からの抜粋なのですが…。


 罪滅し編でレナに自覚されるほど露出した尾行をしている山狗達。一見レナの追跡妄想のようにも受け取れるのだが、この時の彼らの行動の意味は、指揮者の鷹野に刺激させられたレナの動向を本当に監視していると見てしまっていいだろう。
 なぜならば実際レナは鷹野好みの陰謀説を振りかざして騒ぎを起こし、災害直前の雛見沢に奇妙なエッセンスを加える結果となっている。災害後、赤坂達の口から語られたように、レナの引き起こした事件はやはり直後に起きた災害との関連を人々から疑われてしまっている。…誰か知らない連中に尾けられている、という焦りが多少なりともレナの暴走に拍車をかけたのは確かだろう。
 このことは、手違いで死後24時間経過した焼死体が鷹野の偽装死体にされそうになった際、「面白い、祟りが下る(災害)前の雛見沢にはそのくらいのおかしな点があった方がいい」と許可を出してしまう鷹野のやり方に、非常に似通っているように思われる。
 つまり鷹野は己の目的に従って、罪滅し編において扇動したレナを監視していたものと推測される。


 んで、ただ妙な妄想に取り付かれた少女の観察がてら後を尾け回して追い込んでもゆく、というアクションを山狗が取らされていたとして、…この対象が圭一に変わったとしたらどうだろうか。
 新参者にして異邦人の圭一、村や村人に得体の知れぬ疑念を抱き始めた圭一に対してであれば、追跡妄想を刺激する以外にも、被害妄想を刺激するという追い込み方があるのではないだろうか。
 すなわち、わざとらしく轢きかける。
 理不尽な理由のわからない害意を見せつける。
 …クラクションを鳴らして突っ込んできて轢くのに失敗して舌打ちをする。


 顔やワゴンやナンバーを晒す危険を冒してまで山狗がそんな事するかぁ?という疑問も出てくるし、そんな大胆な用兵は無用心過ぎやしねーかという気もしてくるのですが(笑)、圭一がもたらした結果を見ると割と納得が行きます。
 「オヤシロ様がいる」とかわけのわからない遺言を残してクラスメイト二人を惨殺して怪死を遂げたわけです。
 加えて言えば、この鬼隠し編の雛見沢にもその後、大災害が起きています。そもそも起きない理由がないわけだし、皆殺し編でも鬼編アフターでの大災害発生の可能性について冒頭付近でちょろっと触れられてましたね。
 つまり…鬼隠し編の世界では後年、圭一の起こした殺人事件が雛見沢大災害前の奇妙なエッセンスとして位置づけられている可能性が高いわけです。
 そしてそれらは罪編同様に、ある程度鷹野が意図して狙って“付け加えた”ミステリーであるのだろう、と私は考えます。


 こう考えてゆくと、各編での暴走者は少なからず鷹野に接点を持ち、また鷹野に見えざる後押しを受けているようにも思えてきます。
 定期査察員の富竹の不審死と自身の偽装死が「東京」に入江を疑わせる陽動だとすると、こういう暴走者の後押しもまた、ただの鷹野の趣味ではなくて(警察の捜査に対する)陽動である、という風にも見ることができますね。


 まあ、要するに何が言いたいのかまとめると。
 あのワゴンは始めから轢く気ゼロだった。
 その後川原で襲ってきた時も(原作では)圭一は絞め落とされていたし、わざわざワゴンで後ろから轢いて拉致るような乱暴な真似をするとは考えづらい。またそれだったらわざわざクラクション鳴らさない。
 川原にいた時や、その後前原邸を訪れた時の山狗は入江の指示に従い発症者保護を目的としていたのだろうが、ワゴンで突っ込んできた時のアレは多分鷹野の指示。罪滅し編でレナを尾けてる時と恐らく同じ。




 舌打ちの演出の追加ひとつによって、また考えさせられました。
 アニメあなどれん。(お前は多分深読みしすぎです)