レビュー『龍が如く 維新』

      ***  神主様のありがたいお言葉   ***



    お前ら社畜どもがどれだけ神に祈ろうが、社畜に神はいない。





龍が如く 維新】



ラ ノ ベ じ ゃ ね え じ ゃ ね え か
と言うツッコミが聞こえてきそうだ。
確かにラノベではない。PS3のゲームだ。
ゲームなのだが、今日はこれについて語らねばなるまい。
なぜならば再開早々、このブログの更新を二週間放置させた恐ろしき時間泥棒がこやつだからである。ハハハこやつめ。
いつもより増してすっごいダラダラと書くので、長文注意。


さて。
私は病人のように生活スタイルが固まっていて、湯治に行ったり体休めたりするリズムはまず崩れる事がない。生活のリズムを崩すとそのまま体調を崩すので。
ゲームに熱中できるほど若くもなく、適度な集中と時間つぶし用のツールとして利用している。読書やゲームは身体を酷使しないので。
で。
そのリズムを数年ぶりにぶっ壊してくれたのがこのゲームである。
それほど熱中するかと言われれば別にそうでもない。
それほど面白いかと訊かれても別にとしか答えようがない。
だが気が付くと画面の前に座っていて、仕事と睡眠以外の時間はすべて幕末の京都を疾駆する事に費やされている。
京の町の辻々で襲いかかる不逞浪士やら野伏せりやらをぺすとーるで蜂の巣にしまくったりしている。
農村の田舎屋敷に引っ込んで野菜の生産&宅配サービスの運営に血道をあげている。
さすがに社会人なので仕事に支障をきたすほどやり込みはしないが、生活リズムを崩してまで二週間も同じゲームをやり続けるとか中学生ならいざ知らず、淡白な私にしてはかなり珍しい事だ。
はて。どうしてこうなった…と考えて、一つの結論に思い至った。
アレだ。
要は、このゲームの時代錯誤さと、私の仕事の時代錯誤さに、全くもって違和感がないからだ。
私はあくまでも生活の為に神主になっただけであり、信仰と仕事とを同一視するつもりは初めからないし、伝統への憧れとか懐古趣味とかそういったものとも無縁だ。ただただ食えさえすればいい。
しかし、仕事中は常に袴姿、職場は歴史的建築物、業務内容も時代がかっている…となると、頭の中まで古くなるという事はないにしても、異常な常識に対して抵抗感がなくなってくる。
もちろん神道はただの生活者の私にとって異文化でしかないが、生活するためには職場に合わせる必要があるわけで、許容できなければ飯が食えない。
で、自分にとって異質なものである異文化を抵抗なく受け入れるようになると、自分の価値観とはまったく無関係な選択を普通にするようになる。
和食も食べるようになったし、デザートは何になさいますか?と訊かれたら抹茶アイスを選択するようになった。(関係あるのか?)
でまあ。随分と遠回りをしたが。
要するに、そんな時代錯誤な日常を送る私にとっては、時代錯誤きわまりないこのゲームが、そんなに日常の延長からも遠くない世界の話に見えた、という事なのだろう。たぶん。
まあ、製造元のセガの狙いとしては、



1.不況が長く続く今、NHKの大河ドラマに「龍馬伝」が選ばれた
2.時勢にあわせて「長く続く停滞を打破する、維新期のような人物像が今求められている…!」とかメディアが言い始める
3.よーしじゃあセガ龍が如く』の新作を維新期を舞台に坂本龍馬主役で作っちゃうぞー


ってところなんだろうが。
個人的には、セガにはあまり時流にすり寄って欲しくはないのだが。
テレビ東京みたいな。独自路線をこれからも歩んでいって欲しいのだが。
まあ狙いとしては悪くないといえるだろう。
というか。
今の今までずっと、“ヤクザもの”という近年においてはほとんど独自ジャンルに近いようなものをずっと好成績で売り上げてきたセガにしては、珍しく時流に沿うことのできた作品とも言えるだろう。
海外製FPS全盛期にあえて『戦場のヴァルキュリア』を出してみたりしてどこまでも独自路線で一定の評価をもぎ取っていくあたり、国産ゲームメーカーとしては万丈の気を吐いていると評価してもいいのかも知れない。
これだからセガとアトラスからは目が離せない。
まあセガの話はいい。
超いまさらながらゲーム内容に触れるが、幕末期の京を舞台に、土佐藩坂本龍馬新選組斎藤一の動静を主軸としたストーリーである。
龍が如くの番外編としては三作目となる。シリーズの例に漏れず、バカゲーとしての要素を多分に含みながら、合いも変わらずうんざりするほどのミニゲームを大量に搭載し、アクションアドベンチャーとしては十分過ぎるほどの重厚なシナリオを有している。ていうか長すぎて二週間やってもまだクリアできない。やり込み要素が多い。
神社界はおもに世襲制で、そこに属す人間達は古い伝統に縛られたり既得権益に守られたりするために割と世間知らずだったり時代錯誤だったりするから、たぶんこのゲームは神社界では受けると思う。
袴姿の人たちが遠慮なく殴り合う姿は、自覚なく抑圧される神社人達のフラストレーションをひゃっほうと発散してくれる事だろう。
まあ神社界の人はプライド高いからそもそもゲームとかやってても人に喋ったりしないけれど。




【何この長いレビュー】