・祟り殺し編で梨花を殺した犯人についての考察。


祟り殺し編の最後で梨花は、神社の境内で綿流しをなぞるような惨い死に方をする。
暇潰し編の五年後でもやっぱり梨花は同様の目に遭っていて、かつ事件発生五年前の時点でそのことが起きるのを予測している。(但し、「自分を殺すのは奴らの都合ではありえない、誰の仕業なのか」と、その犯人はわかっていないことを述懐)



祟り殺し編で梨花を殺害したと思われる犯人の候補。



1.鷹野三四
(医学的知識を持ち、TIPSの「研究ノート2」で“オヤシロ様の生まれ変わりと村内で位置づけられる梨花を殺したらどうなるか”について論及している。但し、このノートが三四のものでなければ話は別だが)

2.園崎詩音
(富竹の異常な死に誘発され、綿流しになぞらえて梨花を殺害、村内の反応と動きを観察した可能性がある)

3.北条沙都子
(叔父が雛見沢に帰ってくることで、自分に及ぶかも知れない祟り・鬼隠しの可能性が増大したと判断、身を気遣って来訪する大石あたりに焚きつけられるように、殺られる前に祟りの執行者の殺害を決意。
以前からきな臭いと睨んでいたか、オヤシロ様の生まれ変わりでもある梨花を殺害)




…作中の表現からすると、1が最も有力かと思われる。
 鷹野は死体から割り出された死亡推定時刻に普通に活動していたり(綿流し編ラストの大石の台詞より)、なぜか祭りの夜に夜道を富竹の自転車を運んでいたり(祟り殺し編)、と行動に不審な点が多い。富竹の死にも直接的に関与している可能性が高い。
 重大な禁忌とされる祭具殿への侵入も、村内の隙をつきごくあっさりと行ってしまう。
 ただ一つ言えるのは――やや偏向性の高い知的興味だけで、殺人まで犯せるものだろうか、という疑問。別の理由づけも必要となってくる。



2は――ちょっとまあ、こじつけに近い。あり得ないとは自分でも思う。
 ただ目明し編のように大勢を死に至らしめてしまうような暴走が起こっていたのだとしたら、そうあり得ない話とも言い切れない。


 

3は、実は祟り殺し編においては最も怪しいのではないか、と思っていたりする。
つまり――祟り殺し編における沙都子は、目明し編における詩音のような立ち位置にあるのではないか、という考え。

 つり橋から圭一を突き落とすシーンで、沙都子はこう言っている。
「思えば、あの人達も何かに取り憑かれていたのかも知れない。――あの時は殺されるとしか思わなかったから、そこまで考えは及ばなかったけれど。」
 これは、叔母夫妻の事を言っているようにも取れるが――実は梨花と入江の事を指しているのではないだろうか。
 ちょっと、20日放課後(圭一と話し泣きながら帰宅)から21日朝(圭一により風呂で発見)の沙都子の行動を推理して見る。



 (とりあえず、沙都子は独り祭りから帰る道中圭一の叔父襲撃を目撃したと仮定する)
 沙都子、梨花につき添われて下校。今の沙都子の家は北条家なので途中で別れる。
 その道中のタイミングで、沙都子、昨夜自分の見た光景を梨花に打ち明け、圭一が信じられないと告白。そして梨花は「心配しなくていい、全部そのうちに片付いてしまう」とレナと魅音が圭一に対して言ったのと似たような、普段の彼女ではあまりあり得ないような言葉を沙都子に投げかける。
 沙都子、なんだか豹変したように見える梨花に恐怖を覚えると同時に、そう言えば昨年のお祭りの時、梨花は似たような事を言っていたような気が…と思い至る。
(目明かし編・綿流しの最中  梨花「すべて決まっていることなのです。」) 
 同日夜、恐らく圭一が叔父を襲うのを目撃してしまった件で、豹変してしまった親友・梨花にも相談できず、もちろん圭一にも相談することができず、信頼できる大人・入江に相談を持ちかけようと診療所を来訪しようとした沙都子は、その道中(20日20時10分頃か)、「山狗」が大石の身柄を拘束する光景を目撃してしまう。(「山狗」というのは、その単語の使われ方からして患者の強制収容用の人員と思われる)
 その後(圭一来診・逃走、大石からの電話の二〜三時間後か)、診療所を訪れた沙都子は、まだ診療所に残っていた入江に、自分の体験した顛末(圭一の凶行、梨花の態度変化・奇妙な予言、不審な男達(山狗)による拉致)を説明。
 沙都子は何らかの理由により(恐らく圭一に同じ処置を施そうとしたのと同じか、あるいはそれ以上の理由だろう)入江に注射をされそうになり、思わず抵抗。目明し編の詩音よろしく、注射器を奪い逆に入江に注射してしまう。
 中味は長時間人を昏倒させておける即効性の薬物で(作中で入江が紅茶に混ぜようとしたイソミタールラボナールと同等程度の薬物だろう)、入江は急激な眠気にすぐさま昏倒。
 圭一が凶器で叔父を襲うシーンを目撃してしまった沙都子は、「祟りの執行者」に入江が含まれていたと判断。このままでは殺されると思い、水差しと睡眠薬の瓶を見つけると昏倒中の入江に睡眠薬を服用させ自殺に見せかける。(翌朝入江は出勤してきた医師に発熱・失禁・重度の意識障害に見舞われているところを発見される。救命措置の甲斐なく死亡)
 沙都子、梨花もまた祟り執行者の一味、と判断。恐らくは深夜、刃物を所持し古手神社敷地内防災倉庫を来訪。梨花の豹変を目の当たりにしつつも殺害に成功。(恐らく梨花の側に害意はなかった)
 腹を刺すか何かした為、沙都子はこれを儀式殺人に見せかける事を計画。腹を裂き、内臓を露出させる。
 沙都子、恐らくは圭一を操っていたであろう一党の殲滅に成功したと判断。自宅へ戻り、それこそ今すぐにでも襲来するであろう祟り執行者・圭一をアリバイ作成に利用しようと計画。風呂を沸かして家外を監視・待機。
 (虐待され熱湯風呂に漬かって瀕死の振りをしているのであれば、圭一がもし祟りを執行しようとするならばそのまま手を下さず、沙都子を見殺しにするだろう。その隙を突く。
 また、それをなげうって助けようとするのなら…それもまた良し。という判断だろう)
 圭一、沙都子を助け、診療所へと向かう。しかしその道筋は沙都子の予測通りであり、結果、圭一は入江の死を知ることとなる。同時に沙都子、誰にも気付かれずに昨夜の行動の成果を確認。
 沙都子、全裸を理由に引き返さず、かつての生活場所古手神社へと進路を取る。ついてくる圭一。
 そして、境内で梨花の死体を発見。
 祟り執行者である(と沙都子は考えている)圭一の所持する凶器を咎め、圭一を殺人犯と決め付ける。逃走と見せかけ、山奥へ誘導。
 言葉巧みに武装を解除、「ずーっと山を入っていったところにあるつり橋」から突き落とす。沙都子、これで祟りから逃れられた、と確信。

 一方、圭一に伸びるであろう祟りの魔手を見届けるため、ずっと圭一を尾けていた詩音、沙都子が圭一を突き落とすシーンを目撃。
 叔父の虐待から救ってくれた圭一を鬼呼ばわりし無常にもつり橋から突き落とすその光景に、詩音、一年前の沙都子と悟史の構図を重ねてしまう。
 詩音、噴き上がる怒りから目明かし編のような精神状態に。人気のない山奥で独りつり橋の上にたたずむ沙都子を即座に襲撃(きっとスタンガン)、最終的に殺害、死体はどこかに隠す。




 う〜んなんか、わからない事はわからないまでも、一応筋は通ったような気がする。
 憶測ばっかりですけどね。
 ただ、これだとまったくわからないのが、

・大災害の起きた理由
・富竹・鷹野の死 
・大石の車ごと行方不明の理由
・知恵先生・亀田(左腕の亀田君?校長先生?)の避難中事故死とされた死
・雛見沢のあちこちの世帯における窃盗の痕跡
・沙都子・鉄平以外の行方不明住民


など。
ええと、上で述べた「入江と梨花を殺したのは沙都子」説は、21日朝の圭一気絶直後の展開までしか考えていないので…
やはり、災害発生とされる22日未明(2:00〜4:00)までの約一日弱の空白に、色々起きていたのではないかと思います。
入江の死後、診療所や「山狗」がどうしたかも気になりますし、梨花の死、圭一(そしてあるいは沙都子)の行方不明を知ったレナや魅音がどういう行動に出たかなども考える必要がありそうです。
次回は「祟り殺し編 空白の6月21日」を考えてみたいと思います。