今日は、雛見沢大災害のガス発生の経緯について考えてみたいと思います。



 「窒息剤」というものについて調べていたところ、うわぁ…怪しい、というものを見つけました。


ttp://millspec.hp.infoseek.co.jp/page677.html


 ホスゲン
 旧日本軍の化学兵器に使用されていたと言われる物質で、中国の遺棄化学兵器にも内蔵されていたとされる物質です。
 吸入すると肺水腫を引き起こし呼吸困難で死亡します。
 注目すべきは人体に吸収された場合、体腔内の水分および他要素との反応が速く(そして肺に液体を生成)、未反応のホスゲンが体内を循環する可能性は低いという部分です。
 つまり遺体の体内に残らないわけです。
 水と反応すると塩酸と二酸化炭素を生成し、生成物は肺もしくは腎臓から検出されます。
 化学式は以下。



 COCL2(ホスゲン) + H2O = CO2 + (2)HCL

 

 雛見沢大災害では、検出されたガスは硫化水素(H2S)と二酸化炭素の混合物でした。
 この“塩酸”から、硫化水素を生成する方法がないか調べてみると…ありました。



 FeS + 2HCL = FeCl2 + H2S



 硫化鉄と塩酸を反応させると塩化鉄と硫化水素ができあがります。
 自然に存在する硫化鉄としては、二硫化鉄の黄鉄鉱・白鉄鉱等が存在します。
 ちなみに、白鉄鉱は水との反応が早く、硫酸を精製し鉄に変わってしまいます。
 (FeS + 4H2O = Fe + H2SO4 + 3H2)
 ↑この化学式で合ってるか自信ない





 雛見沢中に高濃度のホスゲンをばらまいて村人達を肺水腫発症および窒息死させた場合、遺体の腎臓から塩酸が検出されてしまいます。
 雛見沢住民達は二酸化炭素中毒死のような死因を呈していたため、検出されたガスの成分内容から言っても、腎臓から塩酸が検出されるのは不審、と言えるでしょう。




 つまり何が言いたいのかというと、ホスゲンから二酸化炭素硫化水素とを作ることができる”、という事です。




 まあ、化学兵器たるホスゲンの使い方とはだいぶずれてしまうんですが、
 以前行った推理を踏まえつつ、その筋書きを考えてみると、こんな感じになるのではないかなぁ、と思います。


* * *


 ダム工区にあたる場所の地下には空洞があった。
 そこには雛見沢の綿流しによる、長年に渡る犠牲者達の遺骨が累々と横たわっていた。
 この言わば雛見沢の歴史の闇とも呼べるような、秘すべき空洞の存在を園崎家当主の夫でもある宗平は知っていた。
 知っていたので、終戦にあたり、軍部が始末に困っていた化学兵器を宗平が引き取る代わり、軍の物資を頂戴するという交渉を行った。
 秘密裏に空洞に運び込まれた化学兵器は、ホスゲン内蔵のものだった。
 得た軍需物資を売りさばくことによって園崎、雛見沢は潤った。



 ダム建設には村中で反対した。
 当初、多量の水の底に沈んでしまうのであれば遺棄兵器の痕跡も残らないしいい後始末になるか…的な考え方をしてもいた園崎(お輌)ではあったが(ホスゲンは水と反応して二酸化炭素と塩酸になってくれる)、工事が進む内にダム工区直下の空洞内をいずれ調べられ、雛見沢の罪の痕跡たる遺骨やら隠してある化学兵器に気づかれた際のリスクを考え、反対派に転ずる。
 むしろ逆に、この機にホスゲンを利用した火山性ガスの噴出に見せかけて工事妨害を行いつつ、持て余している化学兵器の一部無力化を図ることもできる、と勘案。
 ある程度工事が進み空洞内に調査の手が入りそうになったら、化学兵器一部開放、発生した二酸化炭素及び硫化水素(この成分構成に至る理由については後述)により工区が「火山性ガス」に覆われるよう、罠を仕掛ける。
 しかしその罠は使用されることなく、ダム計画凍結と相成る。



 そして、昭和58年。何らかの人為的なきっかけで、地下空洞内にホスゲンが噴出してしまう。
 ホスゲンは地下空洞内に充満すると、まず空洞内を流れる地下水と反応。
 多量の二酸化炭素と塩酸を生成し、塩酸は空洞内壁に張り付く。
 そして、この空洞内部に硫化鉄の鉱脈…黄鉄鉱が露出していたために、塩酸は硫化鉄と反応。硫化水素を生み出す。
 さらに塩酸が空洞内に転がる化学兵器を腐食、新たに噴出したホスゲンが水と反応、塩酸が硫化鉄と反応、と連鎖してゆく。
 生成された大量の二酸化炭素硫化水素が、やがて地上へと噴出。
 雛見沢中を覆い……「火山性ガスによる大災害」へと発展。


 その後も、地下空洞内の新たな化学兵器が腐食されホスゲンが発生するごとに、「硫化水素二酸化炭素の新たな噴出が村内で確認される」。
 雛見沢の封鎖は延々と続く。


* * *


…という、シナリオだったのではないでしょうか。



 こういうシナリオだった、と考えてゆくと、入江の自殺が怪しく見えてきます。


 以下、推理(という名の妄想)です。

 入江は、「ホスゲン内蔵の化学兵器が雛見沢の地下に眠っていて、その事実を御三家が隠蔽している」ように考えていました。
 何かのきっかけで21日深夜あたりにその隠し場所へと至ります。
 そしてホスゲンを盛大に噴出している化学兵器を目の当たりにしてしまい、
 自分も吸ってしまったと思い込み、診療所に逃げ帰ります。
 ホスゲンは吸入した濃度によっては潜伏期間を持ち、その間も肺水腫が進行してゆくという恐ろしい化学兵器です。
 入江は地下に充満するだろうホスゲンから雛見沢を絶望視、自身の身もホスゲンに蝕まれており、もうダメだと一足先に睡眠薬で自殺を図ります。
 アンモニアでの中和が効果あるらしいので、失禁していた事と関係は…まあ、ないか。



 一方、詩音はこの化学兵器の隠し場所へと一足先に至っており、偶然からこの化学兵器を開放してしまいます。
 同じ場所にいた、二十名ほどの村人と拉致されてきた大石・熊谷は死亡します。
 葛西が身を挺して詩音を護り、どうにか安全な場所まで逃げ帰ります。
 車を出し、雛見沢からの脱出を図りますが…ホスゲンの効果で二人とも行動不能に陥ってしまい、その後どうにか救助され、大災害の被害者として治療を受けた結果一命を取り留めます。(症状似てる)


 病院で二人は、雛見沢を襲ったガスが化学兵器の中身ではなく、火山性ガスとされている事に首を傾げます。
 で、詩音が起動させてしまった化学兵器は大した量の毒ガスを撒き散らさず、たまたま同日同時刻に火山性の硫化水素ガスが鬼ヶ淵沼より噴出したのだろう、という結論に至り、詩音は罪の意識から開放されます。


 大災害から50日後の8月11日、葛西が死亡します。
 その死に際し、葛西は空洞内の仕組みについて、ほんの少しだけ口を滑らせてしまいます。
 葛西の死後、詩音はダム工区直下に仕掛けられていた罠について調べ上げ…
 そして、ホスゲンを噴出させると二酸化炭素硫化水素となり地上に噴出するというからくりに気づき、
 雛見沢大災害を引き起こし皆を殺したのが自分である、という罪の意識に耐えかね、
 8月27日、病院内で自殺を遂げてしまいます。




うーん。
これなら割と、辻褄は合うように思うんですが…。
こういう展開に至る背景がわかりませんね。
背景を考察しつつ、もう少し、この線で推理(妄想)して行きたいと思います。