魅音の爪三枚・補足>


 目明し編を見直してみました。
 …魅音は自分の爪剥ぎの事をこういう風に説明してたんですね。


「………………詩音だけが…爪を剥がされるなんて……っく、……可哀想過ぎるんだもん……、……えっく…!」


「私ね、……私ね…。婆っちゃにね、怒鳴って言ったんだよ…。詩音と悟史くんをそっとしてあげて欲しいって!! ひっく! ……そしたら…けじめをつけたら見逃そうという話になって……ぅっく! だからね、だからね! ちゃんと詩音ががんばったから……、もうね、二人は普通に過しても良かったんだよ…。なのに、…なのに…、悟史くんいなくなっちゃった……。こんなのひどいよね……ひど過ぎるよね…? うっく……ひっく…!」


「……信じて、…詩音。………本当に悟史くんがどうしていなくなってしまったのか……わからないの。……園崎家とか婆っちゃとか、本当にそういうのは何も関わってないの! 婆っちゃは詩音のけじめで全てを許した。だから…悟史くんに何かするなんて絶対にないの…………!」


 なんか…微妙に辻褄があってない気がします。
 いや、爪三枚の意味が、「葛西、義郎、悟史」だろうが「葛西、義郎、詩音」だろうが、結局悟史は許されるわけですから…この時点で詩音がまだしている勘違いについては置いておくとしても。
 魅音の爪剥ぎの理由が微妙に不鮮明ですね。
 特に、二つ目のセリフ。


魅音が鬼婆に「二人をそっとしておいてやれ」と怒鳴った
・その結果、けじめをつけたら見逃してやろうという事になった


 …やっぱり、何で魅音は爪を剥がしたんでしょうね?
 ――まあ、単に魅音は妹想いで悟史想いのいい奴だったって結論でもいいんですけど、
 ただ…この「けじめ」の決着も、ちょっと変なんですよね。


・葛西「園崎本家から、北条悟史くんの事は忘れるようにと託っています。」
魅音「ちゃんと詩音ががんばったから……、もうね、二人は普通に過しても良かったんだよ…。」


 二人の言っている事はどちらも鬼婆の意思だろうに、…微妙に食い違っています。
 ――まあ、状況を解釈するならば、
 鬼婆の処置とか口にした言葉を踏まえ、魅音が勝手に「二人はこれまで通り暮らしていってもいいんだ」という一人合点をしていて、
 …でも実際はそんな事なくて、結局鬼婆は、葛西を通じて詩音に「北条悟史の事を忘れるように」と通告を下していた。
 という事だったのかも知れませんけど…。



・詩音は北条悟史を庇ったり葛西や義郎に迷惑をかけて爪三枚。
・茜は鬼婆と斬り合って爪一枚。(…。軽くないか?)
・鬼婆はたぶん、生まれたばかりの詩音(魅音か?)を殺す事ができなくて爪一枚。


 こういう風に、過去のけじめを見てゆくと……
 自発的に爪三枚剥いだっていう魅音がどうも怪しく見えて仕方がない。
 ゆえに本当に爪三枚分の何かをやらかしたのではないか、と考えたわけですが――



 まあ、目明し編は双子入れ替わりの物語だから、例えば爪の形とかで両者の入れ替わりがわかってしまってはストーリー的に面白くないんだろうけど…。
 …でも何も、入れ替わり犯罪は詩音の専売特許というわけでもないだろう。



 たとえば――詩音に合わせて爪を剥いでみせた魅音には、詩音と常時入れ替われるような態勢を作っておくべき理由があった……なんて事はないだろうか。
 う〜ん、あんまりこういう考え方はしたくないけど。
 ……大災害発生時の影武者(死体)用に、とか。


 …勘繰り過ぎかなぁ。