礼感想

総プレイ時間は四時間ほどでした。
あーあと、コレで検索されて来られる方が多いようなんで一応書いておくと、
目明し編ではなく礼の)お疲れ様会の最後のタイトルロゴで、いつものごとく「礼」をクリック連打すれば扉は開かれん。
そして内容の方はもはや正直ついていけん。



賽殺し編感想>*ネタバレ含む




 いや。いやいや。凄いね。何が凄いって二時間でこの話を展開できるのが凄えよ普通に。
 思わず時計を見直したね。でも本当に二時間しか経ってなかったね。



 まあ前の記事のおバカな予想でもちょっと触れたんですが、確かに、100年振りの予測不能な世界でしかも勝利に浮かれている梨花のガードは下がってるだろうとは思った。ああ思ったさ。でもそのうっかりで即死するとまでは思わなかったね。
 そんでその結果、一月くらいしか堪能してない100年間分の努力の結晶を一発でおじゃんにするとは思いもしなかったね。
 多分恐らくきっと、この編のタイトル候補には斑壊し編(ぶちこわしへん)とかも含まれてたと思うね。空気読めないデストロイヤーっぷりにも程があるってもんだね。


 編選択画面での紹介文では“難易度が意地悪”となっている訳ですが、これは梨花が前例のない世界にいきなりぶっ飛ばされた理由を証明せよ、的な意味かなあと思いつつ、読み進めてみました。
 でまあ、梨花の飛ばされた世界の成り立ちというのは、ぶっちゃけ梨花にとって不愉快ながらも、仲間達自身からしてみれば幸せに違いない世界であるわけで。
 また同時に、非常識的な存在がなく、常識の支配するマトモな律の治める世界にもなっていると言えるわけです。
 世界の成り立ちはそれこそ初見、飛ばされた時間も初めての座標、加えて言うならばそもそも時間軸上の移動が発生していないというイレギュラーっぷり。
 …つまり。
 梨花はただ偶然にそんな世界にぶっ飛んでいったわけではなく、送られた世界の成り立ちには、誰かの意思思惑が関与しているだろう…というのは明白なわけで。
 で。その誰かってのが一体誰か――という事を考えると羽入くらいしかいないわけなんですが。


 …しかしそう考えると、ここで問題が出てくる。


 (元)部活メンバーがそれぞれ不幸の種を抱えておらず、部活を通じて仲良くなる理由がないとは言え、その上で敢えて梨花が疎外され孤立しているという現状。
 これはまるで、不幸がなければ、皆の心に隙間がなければ、梨花には皆と仲良くなる機会など自然発生しないと言わんばかりの待遇です。
 つまり、梨花がこれまで渇望し続けた幸福な日々とは、皆の不幸という前提の上に成立するモノである…と羽入は訴えたいのか? と考えたのですが、なぜそんな事を訴えようとするのかがわからなかった。




 で、最後まで読み進めた訳ですが。
 …いやー、まさか母殺しとか浄罪とかと絡めてくるとは思わなかった。
 梨花がなぜそのようなイレギュラーな世界に飛ばされたかは明確にはされませんが、「羽入の存在を結果的に拒絶すれば皆が罪のない世界に生き続ける事ができる」という辺りから考えるとやはり、かつて子に己を殺させて多くの罪を濯ぐという奇妙な自己犠牲を選択した羽入なりの“親心”の顕現であり、つまり羽入が全部意図して行った世界移動なのではないか…と思ってしまいます。
 元の雛見沢を選択する為の鍵としてわざわざ母の殺害が条件となっていたのは、罪のない世界を捨て罪まみれの世界を選択する過程において最大の痛みを課す為でしょう。まあ確かに、元の雛見沢を選ぶ梨花のその選択によって皆の人生が不幸まみれになるわけだから、梨花自身にも実母を殺すくらいの禁忌に手を汚して貰わないと贖罪にもなりゃしない、という重い意味もあるのでしょうが。
 羽入は梨花がどっち選択しても自分は幸せなのだと明言していましたが、…腹の中じゃやっぱり、その世界に梨花が留まる方を望んでたんじゃないかねぇと思う。
 どちらも簡単には選べない選択肢とは言え、やはり冷静に見ると条件とか全然対等じゃないし。


 残る疑問としては。
 最終的に梨花は渇望していた元の雛見沢(夏の続き)に戻ったわけですが、羽入は…やはり実体化してないようですね。
 そもそもトラックに轢かれる前のシーンにも出てきておかしくない羽入が出てきませんし、となると祭囃し編のあの転校生羽入は一体何だったのだろう、賽殺し編祭囃し編の後に続く話ではないのか、という事になるわけですが…。
 まあこの辺りは矛盾を孕んでた方が面白いか。


 で。
 二時間を倍くらいに感じさせてくれたこの編に。
 私は改めて、感動の意を表したい。


 …“涼宮ハルヒの消失”と。




(頑張って書いた感想がぶち壊しな上に両者には1ミクロンも共通点ありません)




昼壊し編感想>


 キャラクター達が知略を尽くして潰しあうという事はなく、完全無欠に少女漫画でした。出題編各編の前半部みたいなノリ。
 「礼」ゆえに、礼奈ことレナ押しの話だったのかも知れません。
 前半部のみでまとめて終了。という感じだったので、ずっと以前に作者氏が語っていたFDの内容に一番近いモノかも知れません。惨劇に繋がらない日常、みたいな。




目明し編お疲れ様会感想>


 というかこれ目明し編買った時に普通に読んだ記憶あるっていうかある意味最もサイコなテキストちゃうんかと。
 再収録せずそのまま封印しておこうよと。
 疑問に思い改めて確認したのですが、目明し編以降の解に収録されていたのは目明し編の「スタッフルーム」であって、お疲れ様会じゃなかったんですね。
 でもこれは忘却の彼方に追いやられるべきテキストだと思う。いやいやマジで。


 全年齢対象のラインを(無意味に)ぎりぎり低空飛行で潜り抜けつつもこんなにも病的な嗜好満載のデパートみたいな文章なんて滅多に見られねえよ。
 しかも使用単語だけ見るならばこのままでも難なくCEROを通過できそうなのが恐ろしい。
 本編前半部以上のマッドネスぶりで、物凄く不健全で物凄く有害なのに、特定の単語を論って咎めようがないというのは凄い。
 そのくせ100人が見て100人がデンジャーと判断できそうなその高危険度も凄い。


 なぜにわざわざこのような“ネタとしても危険物”をFDで収録したのかと。
 近々発売のPS2版にて各編のお疲れ様会は実装されてても不自然ではないわけですが、…この目明し編お疲れ様会だけはやはり漏れた、もしくは作り直しを余儀なくさせられた…という事なのだろうか。


 あとちょっと気になったのは、「いいだッ!!」とか訂正されてない誤字が残ってましたね。
 「沙都子をかくまってやればいいだよッ!!」とか、圭一はひょっとして時々チチみたいな口調になるという裏設定でもあるのか。悟空さ。
 全編通して“いいんだよ”から“ん”が抜け落ちる誤字を割と見かけた気がするので(私の気のせいかもしれませんが)、作者氏は今後もテキスト書き終えた後にCtrl+Fなり何なりで「いいだ」を検索して、「ん」を付け足せばラクに誤字減らせるんじゃないのかなあと思う。私にゃこれっぽっちも関係ねえが。
 まあ、もう既にその誤字はネタの一部であるのなら話は別か。(笑)



 総合的な感想としては、楽しめる作品でした。
 FDだから昼壊し編のような雰囲気でまったり流すかなーと思ったのですが、賽殺し編は本編の重い流れをそれなりに受けた作りになっていて好感が持てました。
 仮称うみねこの情報は出てきませんでしたが、ちゃんと次回作にも期待が持てる内容だと言えた。失望せんかった。




 以下ちょっと思ったかなりどうでもいい事を書く。
 …山奥の寒村→島もしくは半島、という舞台のチョイス(変遷)について。
 半閉鎖環境というか半クローズドサークルは、ひぐらしの書き方見てると正直ギミックとしての価値があんまりないんじゃないかと思う。
 ミステリの皮を被った、ギャルゲの皮を被った、最終的にはミステリでもギャルゲでも何でもない別の何かとして「ひぐらしのなく頃に」を定義した場合、舞台も登場人物も絵柄も含め、それらは擬装網くらいの役割しか果たしてないと言える。
 露骨な密室殺人は避けるにしたって、青空密室殺人とか普通に書ける筆力持ってるわけなんだから、閉鎖傾向のある舞台を利用するんだったらもっと密室性を前面に押し出した事件を書けばいいのになー、と思う。
 家庭という密室。村社会という密室。といった様々な密室性は勿論ひぐらしにも登場しているわけなんですが、その密室性は謎を深める為の徹底した不透明さとしてしか利用されてないように思われる。もったいない。
 例えば密室性が犯行の不可能性に直結するようなケースは実はひぐらしでは殆ど出てこなかったので、ぜひその筆力を用いてまた違った角度からも再びプレーヤーを騙して欲しいなあと思う。

礼到着

 礼を入手しました。
 午前中着指定にしといたんですが、午前中は年始挨拶客しか来なかったのでああ
今日は来ないのねーと思い「うおおおおシンディうおおおおジム何でボス戦なのに一発も撃とうとしないのあqwせdrftgyふじこ」などと画面に向かい叫んでいたら、午後になってから到着しました。
 …時間帯指定はどした。スルーか。
(ちなみに死んだ二人から奪ったアサルトライフルでボスは倒しましたが瀕死状態だったため乗車が間に合わずホームに取り残され哀れジョージはそのままノミどもにたかり殺されました)


 まあそんなアウトブレイクプレイ日記はどうでもよくて、そして正月早々っからバイオハザードに耽るという私の問題ある生き様もどうでもよくて、早速これから始めてみたいと思います。
 「ひぐらしのなく頃に 礼」を。正月早々っから。


追記:ちなみに今回の特典はひぐらし名言集ステッカーでした。…どうしろと。

礼予想

 というわけで「ひぐらしのなく頃に礼」を予約しました。遅いよ自分。
 配達事情などから、レポは一月頭〜中旬辺りになるかも。


 製作日記等によれば、礼の名に相応しく純粋なおまけということで、修羅場も発生しなかった模様。
 イコール作品の内容にも修羅場が発生しないでしょう…というのは私の勝手な憶測。
 収録作品は、エンド後の夏を描く「賽殺し編」に、二次作品ひぐらしデイブレイクの作品世界を描いた「昼壊し編」、そして未収録の目明し編お楽しみ会といったラインナップ。
 長さ的には暇潰し編と同程度だそうなのでおよそ四時間くらいでしょうか。
 目明し編のお疲れ様会がここでくっついてくるのはある意味、ちょっと面白いかなぁと思う。もしかしたら多少ぶっちゃけた内容になってるかも。
 まあ、綿編以降さんざん殺人鬼扱い→毎回死亡→冤罪と判明→でもやはりいいとこなしで死亡、という苦難の道のりを歩まされた魅音がひたすら妹に対してキレまくる内容とかでも面白そうですが。
 「礼」には新作「うみねこ」のプロモを意地でも入れるべきなのではないか…と思ったのですが、まだまだ製作初期段階の模様。ムリすね。


 んでは恒例のごとく、各編の予想をばしてみたいと思います。
 …つか推理要素なんて欠片もなくても予想をするのはもう脊髄反射ですか?


<各編予想>


賽殺し編


 ひぐらし世界におけるマルチバッドエンディング方式(KANOSO)からの脱出を果たした昭和58年夏の物語という事で、恐らくこのようなタイトルが付けられているのでしょう。
 すなわち(高い目を出すための)賽が必要なくなった世界であり、そして同時に振られるサイコロそのものである世界であると言えるわけです。
 なぜなら梨花にはもう先に起こることなど何一つわからないわけですから。昭和58年夏の雛見沢は、百年ぶりに新鮮な世界であり、そして百年ぶりの少し不安な世界である…ともいえるでしょう。
 多少不安や淋しさを感じさせる変化の到来があって、己の想像も及ばないぐらいに変わりゆく日常の中、先がわからなさすぎる事に少し不安を抱いてしまう梨花が、実際に何かサイコロを用いたゲームに放り込まれ、戦い方がまるでわからず劣勢に立たされ、その中で自分なりの戦い方・ひいては生き方を掴み取ってゆく(百年前に忘れたそれを思い出してゆく)…みたいな内容なのではないかと思う。多分。
 ……タイトル一ヶでよくもまあここまで妄想できるな自分。


昼壊し編


 これはちょっと二次創作してて思ったことなんですが、“元気で明るいひぐらしキャラ総勢を用いて部活テイストでのバトルロイヤル”は、恐らく作者氏が一度はやっておきたい事だろうと思われます。キャラ立てとか見てても。
 惨劇の舞台上にてではなく、背負う設定背景を放り捨ててトムとジェリーのごとく仲良く殺し合えみたいなキレた内容に違いないと思われます。
 そこまでやるかというようなレベルにまで策謀を巡らし潰し合う人々。恐らくもうハタから見れば惨劇一歩手前でしょうが、ぜひ見てみたいですね。


目明し編お疲れ様会:


 魅音が詩音をハジく。


 そして圭一やレナに「自首しろ」と勧められる。
 すでに大石が屋敷前にいる。
 圭一に「自首する前に30分だけ一緒にいて」と頼むも「いや、死亡フラグだから」と断られる。


うみねこ


 体験版はムリにしても予告編的な何かはやっぱり入ってるんじゃないかなぁ。
 と思ったけどそれだったら、多少なりとも告知するか。
 CD開いてフォルダの中に隠しデータ入ってたりとか。




…しかし、さる同人屋にて予約したのですが、

本体価格  1050円
自宅配送料 520円
代引手数料 420円
計     1990円

ってやっぱ納得いかねえよ。幾ら何でも代引手数料高すぎよ。マージィィン。

<圭一の最期関連・いくつかの謎について>


鬼隠し編終盤での圭一を気絶させた人物は?)


 鬼隠し編終盤、レナに追われて逃げる圭一は二人の謎の男達に出くわし、金属バットで応戦するも気絶させられます。
 そして目を覚ますと家の自室におり、事情の説明を求めたレナは「圭一が自分で起き上がり家まで歩いてきた」と語ります。
 この二人の正体は一体何なのか。


 解釈:やはり山狗の一員かと思われます。


 この男達の挙動に注目したいのですが、金属バットを携える圭一に対し、躊躇無く素手で襲い掛かってきます。
 圭一の一撃を浴びたものの、すぐさま左右にブレイク→腹パンチ→締め落とし。
 この流れから見て、少なくともまず抵抗力を奪う事が目的であったと察することができます。
 たった二人で無刀のままバット振り回す相手に立ち向かい、打撃を受けても怯まなかったことを考えると、やはりこの二人は素人ではなく、それなりの暴力のプロフェッショナルである事が推測されます。


 この段階ではもう既に、魅音は、圭一の医療施設への保護を依頼していた…あるいは見越していたとしてもおかしくありません。
(のちに前原家を訪れる魅音は、監督への電話をしたかレナに確認していますし、またペンと思われる物体を用意してきて、圭一を富竹と同じ目に遭わせようとする…すなわち、シャツの胸に別れの寄せ書きをしようとしています。「元気になぁれ」と言いながら)
 ゆえに、園崎組の方から暴走気味の圭一を保護する為の人数を出させ、レナの行く手に先回りさせて圭一を取り押さえさせた…と見ることもできます。


 ただ、ここで二人の外見上にさしたる特徴がなかった部分にも注目すべきかも知れません。
 服装はラフで、一見、その辺を散歩しているような感じ……圭一の受けた第一印象からは、この二人が園崎組の人間というよりはむしろ周囲に溶け込むのが任務である山狗の人間である、という感触をより強く覚えます。
 人数の少なさ、打撃を受けても怯まない冷静さ、意識を落とすまでの無駄のない連携、バットを振り回す相手に対しての無言のままの冷静な対処、などから総合して考え、やはりこの二人は園崎組の荒事屋などではなく、患者拘束要員にあたる山狗の実戦担当の一員などではないかと考えます。


 のちにレナからの連絡を受け、入江ともども男達が白のバンで大挙して訪れる点から察するに…


 ・風邪で来診した段階で既に、入江は圭一の発症傾向にある事を把握していた。
 ・監視していたところ、症状の露出が顕著になってきたため、患者としての拘束を決定した。
 ・決行を前に山狗が張っていたのだが、その圭一がレナと揉め、あちこち逃げ回っている内に目標をロストしてしまった。
 ・うち二人が付近を探索中、圭一が一人で森の中から現れたため気絶させ確保した。
 ・ところが連れて行こうとしたところでレナが現れてしまった為、怪しまれる前に一時撤退。
 ・レナは意識を失った圭一の前に居る二人の正体がわからなかったが、圭一を置いて二人を追うわけにもいかなかったので、とりあえず圭一を担ぎ、寝かせられる自宅へ戻る。
 ・意識を取り戻した圭一にその事を訊ねられたが、圭一が謎の男達に襲われていた事や、その正体不明の男達が去ったことなどを伝えても、今は圭一を不安がらせるだけだとわかっていたのでとぼけた。


 …このような流れだったのではないかと思われます。




(時計の裏からメモの中央三行部分やマジックを取り除いた人物とは誰か)


 圭一の部屋の時計の裏から見つかった遺書には、中央の三行部分と添付したはずのマジックらしきものが見当たりませんでした。
 先んじてこれを発見し、これらの部分だけを除去したのは一体誰なのでしょうか。


 解釈:山狗と思われます。


 除去されていた三行部分は以下の通りです。
“バラバラ殺人の被害者をもう一度よく調べてください。生きています。
 富竹さんの死は未知の薬物によるもの。
 証拠の注射器はこれです。”
 そして、恐らくはマジックが貼り付けられていたと思われるわけですが…


 まず、前原邸二階の圭一自室、殺人現場に真っ先に到着したのは入江と山狗達だったと推測されます。
 電話ボックスからの最期の電話までに、圭一は山狗と思しき男達に追われていたと考えられるわけなんですが…彼らが全員で追いかけたとは考えられません。
 何故ならば前原邸二階には症候群患者の犯した殺人の痕跡がまざまざと残っていますし、山狗の任務には患者の拘束のみならず症候群に関する情報の流出阻止も含まれます。
 恐らくこの状況下で山狗達が取れる一番いい方策は、圭一を捕まえ人知れず診療所に拘束してしまう事だったのだろうと考えられるわけですが、圭一が逃げ延び電話ボックスから警察に連絡した段階で、警察の現着へのリミットが切られてしまいます。恐らくこの段階で圭一の拘束は断念されたものと推測されるわけですが、しかし前原邸の方ではまだやらなければいけない事が残されています。
 それはすなわち“症候群患者による”犯行の痕跡抹消です。
 犯人が症候群によって引き起こされる諸症状を呈していたという憶測を捜査側に与えるわけにはいきませんので、幻覚や被害妄想を感じさせる遺書の類があっては非常に困った事になります。前原圭一は以前に精神病院への通院歴などもなかった様子なので、この突発的な精神疾患の発生は大きな謎として残ってしまいます。
 前原邸は無人。圭一は裏口の扉を開けそのまま逃走。殺害現場となった部屋は滅茶苦茶に荒れていますし、また掛け時計の裏にマジック付きのルーズリーフを隠した時の圭一はひどく慌てていました。
 …恐らく、簡単に見つかってしまったのではないかと思われます。
 機密保持の為、当初山狗達は遺書そのものを持ち去ろうと考えたのではないかと思われますが、しかし遺書がなかったら、それはそれでおかしくなった少年の突発的殺人で片付けられてしまい、結局圭一の突然の変調に疑いの眼が向けられる事となるでしょう。
 圭一の殺人に対し、症候群の症状である被害妄想以外のもっともらしい理由を“与える”には、彼が連絡を取り合っていた大石の見込みに沿うような「殺害に至った理由」が必要となってきます。
 すなわちそれはオヤシロ様の祟りであり、裏に見え隠れする園崎家の暗躍であり、怪しい実行犯らしき連中の存在です。
 遺書に残されていた文面だけを読む以上は、まるで圭一が誰かに付け狙われていたと錯覚せざるを得ず、そして同時に大石は自分の読みが当たったと誤解するわけです。
 同時に、圭一が精神に異常をきたし理由無き犯行に及んだ、という線はこれで潰されます。
 以上の理由から、機密保持を任とする山狗達は、警察がちゃんと調べたバラバラ殺人の被害者が生きているとか、注射器としてマジックが貼られているとか、遺書の内容がすぐさま妄想と即断されるような部分のみを削除し、捜査誘導を目論んだ…と考える事ができます。

 
 …また、上とは違うひとつの考え方として。
 富竹の死が本当に未知の薬物によるものであり、そしてその死が本当に注射器によってもたらされたものであったという事にも注目すべきかも知れません。
 圭一がこのように書いたのはただの偶然の結果であるわけですが、しかしこの真実を知り得るのは鷹野と山狗のみのはずであり、ゆえに過剰反応した山狗が「圭一が何らかの理由で真実を知り得ている」と勘違いし、切り取っておいたとも考えられます。
 また、「圭一が診療所や富竹の死に関して何か真実を掴んでいたのかも」と思って見ると、そのすぐ上の「バラバラ殺人の被害者をもう一度よく調べて…」という書き方もいかにも紛らわしいものと言えます。
 圭一は単に、入江の「監督」という呼び方を耳にし、惨殺された工事現場監督が生きているという妄想に取り付かれてこう書いただけなのですが、当の山狗達からしてみれば、自分達に攫われ生体のまま何ヶ月も解剖実験に処されたバラバラ殺人の主犯もまた、十分に被害者といえる存在かも知れません。
 まあ、この解釈は穿ち過ぎかも知れませんが、しかしバラバラ殺人の犠牲者ではなく被害者という書き方と、生きていますという確信めいた言葉を見て、引っかかりを覚える人間は山狗にも警察側にも出るかも知れません。
 つまり。バラバラ殺人にて失踪した主犯はどこかへ逃亡したのではなく、何らかの事件に巻き込まれ失踪した…と考えられ、再捜査される恐れがわずかにでも出てくるかも知れません。
 圭一が真実に触れたと誤解したが為に、見当違いの事を書いただけの三行部分を削除した…のかも知れません。


 昭和58年で定年となる大石が捜査継続を願い、圭一の遺書から妄言とはっきりわかる部分だけを切り取った――という解釈もあるのですが、しかしこれは罪滅し編での大石の態度によって否定されているように思います。
 罪滅し編にて、レナの語る壮大な悪の計画を信じ込み捜査を進めようとしながらも、レナの抱えるスクラップ帳(の同類)の中身を知った大石は、あっさりと手を引っこめました。
 また。妄言かも知れない遺書の内容を信じ、妄想に取り付かれていたかもしれない殺人者の危機意識を捜査陣に無理に信じさせ、そうまでして自分の見込み通りの捜査を進めたところで、何か出てくる保証があるというわけでもない――そのくらいの事は、大石にもわかっていただろうと思われます。
 ゆえに、大石は遺書の改竄は行わなかった、と考えます。




 とりあえずこの二つの謎については上のような解釈を当ててみました。
 圭一の遺書の切り取られた部分に、「当たっている」内容が含まれているというのは、やはり真実を知るものの仕業…つまり、切り取ったのは山狗か鷹野、て事を表しているのだろうと思われます。

鬼隠し編:圭一の最期関連・いくつかの謎について

 残る疑問等ございましたらコメント欄にどうぞ遠慮なく「貴様の解釈を聞かせやがれ」と書き込…言葉を慎めこの野郎。と先日の記事に書きましたところ、ホントに礼儀正しい丁寧極まりない書き込みがございました。
 そこは! そこはスルーしてくれて構わないっす! いつもの私のタワゴトっす!
 何はともあれ早速のコメントありがとうございました。
 というわけで本日は↑のあたりの謎について、解釈をば当ててみたいと思います。

<圭一の最期にまつわるいくつかの謎について>


(圭一の聞いた足音とは)


 圭一が死ぬ前日あたりにナースコールで残した「足音が、また一つ余計に…」、これは羽入の足音を感知したものだったのか?
 またそうだとすると、梨花死亡の半年後くらいにも羽入は祟殺し編の世界に存在したという事になってくるが、それなのに(皆殺し編に至るまで)真犯人の正体をまったく掴めていない、というのはおかしくないだろうか?


 解釈A:足音は確かに羽入のものだった。


 まずこの解釈をするにあたり、羽入が梨花死亡後に祟殺し編の世界にも存在している可能性を証明せねばなりません。
 そこで、皆殺し編から祭囃し編へ移る際の梨花と羽入との“ズレ”を挙げます。


梨花皆殺し編ラストで殺される→
 記憶を失い、祭囃し編Cパート冒頭(昭和58年6月12日)へ


羽入:皆殺し編ラストで梨花の死を見届ける→
 祭囃し編の昭和54年以前、研究所設立時に神社へお参りに来た鷹野へ向かって、彼女こそが真犯人であると告げる→
 祭囃し編Cパート冒頭(昭和58年6月12日)、死亡直前の記憶を失ったままいつものようにループしてきた梨花に対し、真犯人の名を告げる


 少なくとも“皆殺し編祭囃し編”においては、羽入は梨花の主観移動に従った移動をしているわけではない、という事がここから証明されます。
 しかしながら、羽入が語る「梨花の死亡直前の記憶が梨花同様に曖昧になっている」というのは恐らく真実だと思われます。
 なぜなら、他編での梨花の死因には鷹野達によって手を下されたと思われるものが少なくありませんし、そしてそうであったにも関わらず、羽入は彼女が真犯人である事を祭囃し編まで断定できずにいました。


 …じゃあ、祭囃し編の羽入が昭和54年以前に出てきたり、また梨花が鷹野に殺された事を“憶えて”いるのは一体どういう事なのか? と考えると。


 梨花はある編で死ぬと、他編のそれまで存在した梨花に“割り込み”をかける形で蘇ります。
 ――しかしここで。
 羽入が数多の世界(編)そのものを俯瞰視できるような唯一絶対の神的存在ではなく、世界(編)それぞれに存在する、並列的なモノであると仮定してみます。
 その上で、かつて罪滅し編で羽入自身がそう語ったように、梨花とある程度似たような現象が彼女にも起きている…、とさらに仮定を重ねてみますと。


 梨花死亡→連続する記憶を保持した意識は他編の梨花へ→他編の梨花上書きされる
 これに従って羽入の意識も移動→(梨花よりも時間的にずっと以前の段階で)他編の羽入の存在、上書きされる


 …こうなります。 
 この場合問題となってくるのは梨花死亡後の羽入ですが、“連続する世界の記憶だけを失ったまま”その後も存在し続けると推測されます。
 つまり…梨花が死んでしまった編での羽入は、(他編から割り込んできた際に持ってきた)「梨花と自分の意識に対しずっとループを発生させ続けている」という事実と、その間およそ百年分に渡る記憶、そして、その編で“梨花のループ”に使われた期間の記憶だけを無くしたまま、…その後も元々この世界に居た羽入として存在し続ける事となります。


 で、ここで圭一の話に戻るんですが。
 かつて茨城で暮らしていたレナはオヤシロ様を見たと語り、また雛見沢においてはいつもそばに居た羽入の存在をなんとなく認識していた模様です。人間ではないと知りながらも。
 これを雛見沢症候群がもたらす知覚とした場合、祟殺し編の圭一にも同じような知覚が発生していたことが推測されます。
 つまり…、圭一は本当に、祭の夜の最後に誰かの足音を“聞き取ったり”、あるいは入院先の病院で足音を“聞き取ったり”しているわけです。
 前者は、状況の流れからこの編での末期発症する人物を先読みし、圭一の凶行を見守っていた羽入であり、
 そして後者は、ループ中の記憶のみを失った、この世界にはじめから存在する羽入の足音であった。(雛見沢の唯一の生き残りである圭一を見守っていた)
 さらに言うと、昭和54年以前に鷹野の前に現れた羽入は、(何らかの理由で)梨花死亡直前の記憶を維持したまま、この時すでに皆殺し編から飛ばされてきていた羽入であった。


 …とまあ、こういう解釈がひとつ。


 解釈B:羽入などそこには存在せず、単なる症候群の症状だった。


 おはぎの中に針、「学校休んじゃ嫌だよ」、などなど、症候群の症状には幻覚も含まれます。
 被害妄想で認識が極度に歪んでいる以上、視覚のみならず聴覚にまで幻覚が発生しているとみなしてもいいでしょう。幻聴ですね。
 つまり。圭一が聞いた音には実際の羽入の足音も含まれていたが(鉄平殺害日の夜)、死ぬ前日あたりに聞いた足音は幻聴であった。
 その頃には羽入はもう祟殺し編の世界には存在しなかった。


 …と、こういう解釈がひとつ。


私としてはAの方が面白いと思うんですが、たぶんBが正解なんだろうなぁ。
理由は後述。




(圭一はなぜ死んだのか)


 祟殺し編にてインタビュー推定二日後くらいになぜか逝ってしまう圭一ですが、これが感染者を処分する必要のある山狗の犯行だったとすると、なぜ半年も待ったのか。
 事の真偽はどうあれ、政府の上の方は女王感染者を失った症候群感染者が凶暴化するとみなして全村民を抹殺したのだから、「結果的に凶暴化しなかった」例外的位置付けとなるだろう圭一も、山狗からしてみればさっさと始末しなければならない存在だったのではないか。


 解釈:諸事情により殺すメリットの消え失せた圭一はそのまま放置され、ふと症候群をより悪化させるきっかけを得てしまい、死んだ。


 まず圭一を処分する必要についてですが、このへんは祭囃し編で圭一が取った作戦ともちょっと関係してきます。
 彼らの作戦の勝利条件は、「梨花が死んでる事にして遺体の確認をさせないまま48時間逃げ回る」でした。これは終末作戦の遂行に大きな支障をきたし焦る鷹野&山狗をいぶり出す為の手でしたが、ここでポイントなのは、目明し編エピローグからも判るように、梨花が実際に死んでいたとしても48時間後には何も起こらなかった、という事です。(もちろん圭一達はそんな事考えもしませんが)
 つまり。祟殺し編梨花の推定死亡時刻は21日未明です。
 圭一が分校前に到達、保護されたのが22日朝〜昼でした。
 この段階では雛見沢はすでに災害出動の一般部隊に引き継がれており、山狗達の制圧下にはありません。
 そして直後に、恐らくは硫化水素を吸い込んで圭一は肺水腫で死にかけました。
 (倒れる時の描写があまり肺水腫っぽくないので偽装の可能性も高いですが)
 圭一の蘇生措置、治療はあまり人が近づけない場所で行われたと推測されます。
 (現地はガスが充満しているため、恐らくは完全機密性の医療テント内などで治療されたと思われる)
 諸々の事を鑑みて、少なくとも24時間は殺意ある誰も近づけなかったのではないでしょうか。
 要するに。発症の危険性があると見なされていたはずの圭一は、何も知らない自衛隊一般部隊の医療班によって48時間のリミットを越え、“別に末期発症なんてしない”という患者の実例を示した事で、今さら消される理由もなくなってしまい、結果的に生き延びた…命を救われる結果となったのではないでしょうか。
(もちろん、引越してきたばかりの例外的な村民だから患者ではなかった、と結論付けられた可能性もあるが)


 そして、入院していた詩音は症候群の症状悪化により自殺。
 (祟殺し編の詩音は、祭の前日夜、圭一から悟史と同じ内容の電話を受けた事で発症のスイッチが入ってしまった可能性が高い。鉄平の死体消失や、魅音達のアリバイ工作など、詩音が何らかの助言あるいは裏で実際に動いていたと考えられる事も多い。また、沙都子の事情や、魅音に祟りの相談・祭前日に沙都子を頼むと電話してきたりする圭一の不審な挙動を知る位置にいながら、圭一自身の犯行を阻止しなかったのは、目明し編での彼女の行動パターンと同じように“圭一を泳がせていたため”…とも推測できる。)
 治療によりどうにか死なずに済んだものの、圭一も祟殺し編ではやはり完全な発症者なわけで、同様に自殺未遂を起こし、サナトリウム的な施設に送致。
 そして、そこであのインタビューを受け、(症状を進行させない為には精神の平安が重要だったが)人を呪い殺そうとするような真似をし、自身の症状を重くさせてしまい、二日後に衰弱死。


 …と、こう解釈してみました。
 この解釈だと、圭一が倒れた時に「何としても生かせ!もうこれ以上絶対に死なせるな!死んでいい命なんかないんだァァ」と叫んでいた自衛官の人がちゃんと圭一を救ったみたいにも思えるので、私はこれを支持したい。(お前の趣味かよ)




(あのインタビューは本物か? インタビュアーの死の原因は?)


 警備の厳しそうな医療施設に圭一は入院していたわけだが、あのインタビューテープは本物なのか。
 また、インタビュアーの記者の危難失踪は本当に偶然なのだろうか。


 解釈:本物でいいと思う。
    偶然でいいと思う。


 まあこれに関しちゃさしたる論拠もないのですが、死ぬ前に圭一はナースコールで「足音がまた一つ余計に」と言っています。
 つまり、この言い方からするとこの時の圭一は歩行可能な状態であり、また実際に歩いてもいただろうという事が推測できます。
 つけくわえるならば、死亡のタイミングから言ってインタビューが症候群悪化の直接のきっかけだった…と考えると、それまでの圭一は雛見沢症候群の悪化を抑えるような、それなりに心穏やかな環境で生活する事ができていたと推測できるわけです。
 要するに、外側の警備は厳しい施設だったかもしれないが、患者が自由にあちこち歩き回れるような、内側の警備は緩めの施設だったのかも知れない、と考えます。
 ゆえに。このテープにあったようなインタビューなどが実際に行われたと考えても良いかと思われます。


 …一応、他殺説なんぞを考えてみますと。


大穴:インタビューの間中、羽入はずっと、野次馬根性丸出しで雛見沢の名前を出す記者やオヤシロ様を祟り神のように語る圭一の言葉を聞いていた。
 キレた。
 圭一に付きまとって足音を鳴らしたら、たった二日で死んでしまった。
 そして十年くらい後、記者の後をつけていき釣り船の上で足音を聞かせまくり、ビビらせてみたら、記者は「クールになれ…。クールになれ記者…! そうだ! 海に飛び込めば足音なんてもう聞こえないじゃないか!」と、圭一か雲雀13でもない限り思いつかないような名案を閃き、むしろ嬉々として海に飛び込んだ。(その後当然おぼれた)


 …。いやこれはさすがに。ないよね。




祟殺し編でリナを惨殺したのは?)


 アパート裏のドブ川に捨てられた惨殺死体となって発見されるリナだが、
 これは一体誰が殺したのか。
 園崎がこんなわかりやすい殺し方をするとは思えないし、
 山狗にも消す動機がない。
 またレナの仕業とも思えない。
 じゃあこれは一体誰がやったのか。


 解釈:園崎組の見せしめじゃないかと思う。


 億クラスの金を盗まれたわけで、しかも複数犯。残りの連中は高飛び済み。
 これだけの真似をされて、以後内外ともに舐められない為には多少の見せしめも必要という事なのでしょう。…残虐な考え方ですが。
 あの拷問はどうみても単にホステスに金持って逃げた男の居場所を吐かせる為にしてはやり過ぎですし、見せしめとしての意味の方が強かったものと思われます。
 ペット用首輪にダンベルをくくりつけてドブ川に沈めてますが、刑事の人も言ってたように“こういうのは隠す気がない”。これは恐らく正解でしょう。
 皆の眼に触れる形で発見させなければ、あそこまで惨たらしい殺し方をした“メリット”がないだろうと思われます。
 リナが皆殺し編においても全く同様の末路を遂げているらしい事から考えても、やはりこれは、それなりに強い意思の結果……つまり、リナによる金盗んで逃げる計画発動→園崎組による見せしめ、という展開の結果なのではないかと思われます。




 今日はとりあえずこんなとこで。
 いろいろと自分なりに考えて解釈を書いてみたのですが、真実はもっとシンプルなものかも知れません。
 私好みのねじくれたAではなく素直なBが正解かも知れません。いや流れ的にたぶん。


 今後は、鬼隠し編あたりの残された謎あたりから解釈をつけて行こうかと考えていますが、閲覧者の皆様におかれましては「この謎がどういう事だったのか知りたい」という質問等ございましたら、今日の↑のように記事形式で返答して参りますので、どうぞ遠慮なくコメント欄の方に「今すぐ知りてえんだよ! 貴様の解釈を聞かせやがれ!」などと書き込…言葉を慎めこの野郎。(←正気を取り戻して下さい)
 ではでは。