アニメ暇潰し編感想・推理のすすめ

 お久しぶりでございます。
 某所の「トトロのなく頃に」のせいで、昨夜放映された「となりのトトロ」を内心恐怖しながらの視聴を余儀なくさせられた私です。
 ちなみにリアルでああいう感じの農村に住んでます。夜道を歩くと普通に蝙蝠が追ってきます。


 ぼやぼやしてたらアニメ暇潰し編が終わっちまいましたね。
 というか二話しか使わなかったのですね。暇潰し編は確かに原作の中でも一番短いんですが。(プレイ時間はだいたい5時間くらいか)
 さて感想。


<アニメ暇潰し編感想>


 まず、ちょっとびっくりした。実尺50分も使ってないだろうに見事にまとめられてたので。
 当然の帰結としてあちこちのシーンがカットされていたわけですが、それらがほとんど効果的に働いていて良かったと思う。


 冒頭の犬飼寿樹誘拐。男達の作業服姿は、違う編の違うシーンで出てきた彼らと同一人物ですよ…と提示してしまっているのだろう。
 この時点で、背後関係がわからん以上は彼らの正体をどう解釈しようもないのだけど、たぶんアニメ版だけ見てる人だと、鬼隠し編の描写あたりから判断して監督の手先のように考えると思う。
 けれど、両者の関係について、その事を疑わせる描写もこの後に出てくる。まあ…このあたりは演出の妙であり、またアニメにゃ出てきませんけど、原作における台詞回し(↓)の巧妙さの結果と言っていいんだろうな。
「…先生には関係ない事です。」「入江の先生、喋ったんかいね。」


 赤坂は、原作絵よりも圭一に似せてあるみたいな感じを受けた。良かったと思う。
 暴対の山海氏。さんかいって読むのか。やまみだと思ってた。


 鬼婆ことおりょう婆さんのキャラデザインは、どう園崎母子と似せてゆくのかなと疑問だったのですが、なるほど前髪が魅音と同じ形なんですな。しかしまあ何つーか、顔つきは鬼婆そのものであり怖すぎ。黒目小さすぎ。
 公由喜一郎は落ち武者カットでしたね。もうちょっと村長っぽい固いキャラデザインになるかと思ってたので意外。


 原作では雀荘でいきなり赤坂の秘められし暗黒面が明らかになったりするんですが、これはカットされてましたね。情報屋との接触のシーンの導入部に雀荘前が使用されるに留まり、これは話の流れやシリアスさを損なわない意味でも良かったと思います。


 一番残念だったのが親族会議というか御三家会議の描写。
 原作の描写から私はてっきり、20畳くらいの広間を二つ使い、床の間前の上座におりょうの布団が敷いてあって、その両脇を直系親族が固めていて、左右に御三家の主だった人々が格順に向かい合う形で並んでいて、そんでおりょうの布団から少し間を開けた前方に、まるで藩主に新年の挨拶にきた家臣達みたいに大勢のその他出席者が整列している…みたいなヤクザ映画の会議みたいな光景を予想していたのですが。
 なんか普通に応接用机を囲んでましたね。
 当然、原作のように梨花おりょうの布団に足を突っ込むという王様ぶりを発揮していない。少し残念。


「東京へ帰れ。」の時の顔よりも、その直後の瞳孔開きっぱなしで焦点合ってない顔の方が怖かった。


 さて、財布の発見から話は急スピードで進み、入江と大石の接触のシーン。
 「ちょっと気になることが…」というあの台詞はない方が良かったかも。
 人家のない山奥に呼ばれて子供を診せられた入江ですが、原作では大石と社交辞令的なやり取りを交わすのみで去ってしまいます。
 色々考えると、やはり入江が大石にこの不審について何らかの形で告げるのはちょっと微妙な気がする。
 原作の通り、問題なく言葉を交わしてすれ違ってから、このあたりには人家なんてないはず…と後で大石に怪しませる展開の方がスムーズのような気が。


 電話線を切りまくった理由を問われ、あっさりと白状する梨花
 しかし返答は謎をかけるような台詞で、赤坂からしてみれば何のこっちゃという感じでしょうが、このシーンは原作よりもアニメ版の方が良かったかも知れない。
 原作では電話線を切りまくった梨花の意図は本人の口からは語られず、赤坂がずいぶん後になってからその心中を察する形になるんですが、この綿流し祭の夜の時点ではもう、誘拐事件も片付き赤坂も死なずに済みそして雪絵は既に死んでしまっており、と状況的にほとんど終わってしまっている以上、梨花は(アニメ版のように)赤坂に「話聞いてもらう時間が欲しかった」と電話線切った理由をすぱっと言っちまっても良かったのかも知れない。
 …とはいえ、原作ではこの行く先行く先電話線が切れてるシーンはホラーとしての演出がなされてるワケで、アニメ版での淡々と進んだ同シーンとは全然趣が違うわけで、だからこそ原作での梨花は赤坂に電話線切った理由を言わなかったのかも知れませんけど。その方が怖いしね。後引くしね。


 暇潰し編、非常によくまとめられていたとは思うんですが、ただ一つ大きな問題が。
 「暇潰し編」というのは、梨花の行っている行為または過ごしている時間が結果的に彼女にとっての暇潰しとなっているからこそのタイトルだとは思うんですが、アニメ版だとそれが全くわからなかったですね。
 もう少し梨花の退屈を前面に押し出してみてもよかったかも知れない。


暇潰し編・推理のすすめ>



 さて、アニメ版暇潰し編を見終えた方への推理のすすめ。
 また現国の出題文風に、編中に転がる幾多の謎について考えて参りませう。



Q:暇潰し編中において、作業員の男達は何をしたでしょうか?
A:犬飼寿樹の誘拐。移送。監禁。交渉。工作(見つかった財布の件)。解放。
  交渉や工作などは男達の仲間あるいは操り主が行ったと見てもいいが、操り主を園崎組と即断すると少し問題が出てくる。詳細は後ほど。

Q:この誘拐事件について、園崎家はどこまで情報を掴んでいたでしょうか?
A:誘拐の事実、公安から赤坂が来るという事。
  梨花からの質問に対し園崎父が答えているので、情報源は恐らく園崎組と考えていい。これは単純に警察・公安に対して情報網を持っているあるいは雛見沢関連の動きに関して見張っていた結果と考えてよいと思う。大石があっさり、警視庁から来たと主張する赤坂から“鬼ヶ淵死守同盟にマークをつける事になったというのは嘘で、何かあったな”と出張の真意を嗅ぎ取ったように、園崎組もまた雛見沢へ新米一人を送り込んでくるという公安の動きなどから色々情報を得た(各種過激団体への大規模なチェック開始とか捜査員派遣とか大臣宅周辺の警戒が厳しいとか)結果、犬飼大臣絡みで何か起きている、すなわち孫が誘拐された……という事実を探り当てた可能性がある。

Q:梨花は未来を知る事のできる予知能力者なのでしょうか?
A:違う。梨花が“決まっている事”として告げる内容はどの編でも起きる事のみであり、そして梨花は赤坂に東京に帰るよう警告したりあるいは電話線を切って回ったりなど、己の知り得ただろう“先に起こる事”に対する介入行為を色々と行っている。これはすなわち、現状の梨花にとって変更可能な未来とそうでないものとが存在するという事であり、またそうであるからこそ暇潰し編終盤、古手神社高台にて『水面に映った死という影を掻き乱す為に投げ込む小石程度でしかない存在の』赤坂に向かって、あのように「死にたくない」と助けを求めた、という事になる。だが梨花に本当に未来が見えていたのであれば、祭の夜に電話線を切って回って赤坂に奥さんの死を知らせず、自分の話を聞いてもらう…助けを求める時間を作る、という事をしたところで無駄だという事が簡単に解るはずである。(結局は奥さんの死を知って全部頭からすっ飛んでしまい、やがて梨花は死に、雛見沢大災害の報道後に赤坂はようやく梨花が助けを求めていた事を理解する事になる)つまりこの無駄な行動を取ってしまう事から察するに、梨花にはそこまでの展開が読めているわけではなく、未来予知の力を有しているとは少し言い難いものがある。
 そして、梨花が語る内容から彼女が怪死事件の黒幕と繋がっていると考えるには、あまりにも梨花は(それ以外の)先に起こる事を知り過ぎており不自然と言える。
(赤坂雪絵を誰かが殺し、それが梨花と繋がる人物であった為に梨花が雪絵の死を知り得たというのなら、その事に気付くかも知れない赤坂に向かって梨花が助けを求めるのは激しく筋違いである)
 また梨花がなぜ先に起こる事を知っているのかは、「ひぐらしのなく頃に」という作品そのものの多重編構成とも合わせて考えるべきであるだろう。編と編との相違点はキャラの初期配置・距離くらいであるのだが、その展開は大きく異なり、そして梨花が告げたような“決まっていること”だけは必ずいつも発生する。
 つまりこれはどのようなキャラの初期配置・距離だろうが、事件の発生を知り得ている梨花がそこにいようが、怪死事件は起きて梨花は死ぬという事であって、この各種殺人を起こしている何らかの存在がいるとした場合、その意志というものは、例えばダム計画が抵抗運動によって無期限凍結になるのと同レベルくらいに動かしづらいものである、と言えるだろう。

Q:梨花が断定したいくつかの“先に起こる事”などから推測してみて、梨花は何を知っているのでしょうか?
A:先に述べたように、梨花の無駄な行動…結局無駄になってしまう行動等から考えると梨花が見ているのは未来とは言い難いものがあり、また、ひぐらしの特殊な多重編構成を合わせて考えてゆくと…。
Q:赤坂へ語った内容、赤坂に対して起こしたアクションなどから推測してみて、梨花の目的と、そして彼女の現状での立ち位置とはどういったものでしょうか?
A:目的は語った通り、「死にたくない。」「仲間達と幸せに過ごしたい。」
  しかし彼女の知り得る限り数年後の彼女の死は不可避であり、実際に彼女は先に起こる事に対する各種改変を行っているもののそれらは根本的な解決には結びついていないという事であり、故に赤坂に助けを求めている。
  怪死事件の犠牲者役になる事を知りながら逃れられていない、というような立ち位置。

Q:なぜ祟殺し編とその後の結末が似通っているのですか?
A:それらはつまり決まっている事だからであり、あるいは物凄く動かしづらい未来であり、またあるいは必ずその結末を引き起こす何かが介在している為と言えるだろう。
  ただ、梨花は己の死については言及したが大災害については何ら言及していない。
  このへんもまた、「梨花の知り得る内容」について考える一助となるだろう。

Q:結局、寿樹をさらったのは園崎組ですか?
A:違うと思われる。なぜならば、犬飼大臣は誘拐の件を警察沙汰にしておらず、そしてそのまま最終的にダム計画凍結を決定した。それなのに犬飼寿樹の財布がわざとらしく雛見沢の奥地で発見されるのはどう考えても流れ的に不自然であり、ある種のデモンストレーションのようにしか受け取れない。そして仮に寿樹をさらったのが鬼ヶ淵死守同盟とした場合、そのようなアピールを行うメリットが皆無である。誘拐事件が表沙汰になっていた場合は単に死守同盟がテロ団体として強いマークを受けるか潰されるだけの事であり、そして表沙汰になっていなかった場合でも以後監視を受ける事は必至である。警察に寿樹の遺失物を届けるというこのまるで衆目に晒すようなやり方は、実力者の孫を誘拐しての密かな強請りとは相反するものがあり、当時国と対立していたとは言え、死守同盟がそのような危険極まりない挑発をむざむざ行うとは考えにくいものがある。


うおお。すげー疲れた。
暇潰し編は原作においても難易度最悪とされてます。ワケわかんなさ全開ですね。
とはいえ出題編はこの四編目まで。解らない事盛り沢山だろうが、以降の目明し編より情け容赦なく解答編に入っていってしまいます。
この「暇潰し編」視聴後に一旦区切りをつけ、ご自分の推理をまとめてから目明し編へと臨むのもアニメ版のひとつの楽しみ方かも知れませんね。